赤松敏弘Vibraphone Connection Clinic-2

WEB CLINIC - 2

ジャズ・ヴィブラフォンの奏法クリニック 中級編 /赤松敏弘

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インプロヴィゼーション編/インプロヴィゼーションの考え方
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(1)コードは単独では存在しない 
(2)ドミナント・セブンスコードに強くなれ・その1 
(3)その2・HMP5の考え方を知ろう
(4)アプローチをGetせよ! Motive-I
(5)2006年冬休み特別講座Motive-2


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音楽を文章で説明すると言うと短気な人はすぐに投げ出してしまうかもしれませんね。音符や譜面は少ないほうが良い。音だけ拾って意味もわからずに音を出すくらいなら僕はそのほうが良いと思う事があります。

投稿メールやBBSでもっとも多い質問が即興演奏のやり方や、その勉強の途中での質問。中には「とっておきのフレーズを是非」とか「コピー譜の掲載要望」とか、、、、、。必死なのはよくわかるんですが、カップラーメンのように3分でできるなんてものはないです。そのようなメールにはレスも出しません。しかし一生懸命考えてあげくに解答を求めてくる人も多いのは事実。ジャズ系の理論書で完璧な説明があればいいのですが見当たらない。そこで、ここで少しだけヒントを書きます。譜面の掲載は極力減らしています。文字から情報を解析して下さい。文字から音楽を創造するなんて素敵じゃないですか。理論(それもあまり意味のない譜例)ばかり眺めていてもイメージは掴めませんよ。ジャズの初歩ではコードネームというヒントを「暗号解読」しながら音を出さなければならないからです。
もしもここで説明している事が理解できないのであれば、、、、本屋に直行して理論書を購入してから読んで下さいね。

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(1)コードは単独では存在しない、、、、という考え方の源

よくアドリブ、アドリブと騒いでいろんな本や雑誌に断片的に出ている事を寄せ集めて誤解している人がいます。「誰にでも出来るナントカ」みたいな感じのキャッチコピーに吊られて買ったけどさっぱりわからんゾこの本!、という人が多いのです。「誰にでも出来ない事だから、ちょっと頑張れば出来るようになる本」というキャッチコピーの本があればそれは信用してもいいです。
コードだけで何かをやろうとする人や、原曲のコードを強引に置き換えて満足している人もいます。それはそれで探究という事では良いのですが、もう少しベーシックなところを固めてみるとさらに音楽や即興が楽しくなるんじゃないかと思います。

コード・インプロヴァイズをやる曲には調性があります。その中でメロディーが流れ、それを支えるコードがあります。その仕組みを知らずして勝手に変えてしまっては、解説書を読まないでソフトをいじり倒すようなものです。それで分からないという前に、(全部読む必要はありませんが)ガイドライン程度は目を通すべきですね。音楽も同じです。

調性(以下Key)は長調と短調が基本的な形としてあります。

階名で読むと

長調は do-re-mi-fa-sol-la-ti-do 
短調は do-re-me-fa-sol-le-te-do 
です。

どちらにも2ケ所の半音が結び付く位置があります。まずこれを理解して下さい。

さて、これ以降に書くすべての階名は移動ドを用います。ひゃーって思う人も多いでしょうね。もちろん僕も最初はその一人でしたが、少なくとも最初の理論的な説明を納得するまでは移動ドにする事をお薦めします。それ以降は自由ですから。移動ドにしたからって別に誰も死にはしないよ。。。うん?

・ダイアトニック・スケール・コード

コードを作る時にはこの音階(スケール)の上に3度間隔(長・短を含む)でスケールにある音を3つ重ねます。つまり一つ飛ばしにオクターヴ内で重ねるわけです。

Cから始まる2つのスケールを使ってできるコードは

長調なら Cmaj7-Dm7-Em7-Fmaj7-G7-Am7-Bm7b5 
短調なら Cm7-Dm7b5-Ebmaj7-Fm7-Gm7-Abmaj7-Bb7 
です。

これをダイアトニック・スケール・コードと呼んで今後しばらくの間はコレと格闘する事になります。
これらのコードはなにも脈絡なく存在するわけじゃなくて、それぞれに性質がありグループ化されています。それがどのような根拠で分類されているのかを知らないと誤解や間違いを多発してしまいます。

さっきの半音のある位置の事を思い出して下さい。隣あった音が全音の時は2つの音を同時に鳴らすと響きがブレンド(お互いにお互いの響きを尊重し合うとでも申しましょうか、、、)していますが、半音の時は反発(てめぇ、コノヤロ、邪魔すんじゃねー、みたいな、、)し合います。コードを作る時に音階から音を拾ったという事は、当然コード構成音の間には拾わなかった音も暗黙の内に調性として存在しているという事で、そこには性質や性格があるわけです。

3度の重なりを持つコードであれば、その間に半音の音が音列としていろんな形で挟まっているはずですね。この各コード固有の形を僕らは「コードスケール」と喚んでいます。後々に拾わなかった音をTensionという呼び名で呼ぶ事になりますが、突然9th,11th,13thと両手の数よりも多い数字で悩ますよりも、こうやって「最初は拾わなかった音」として理解しておけば楽です。

Tensionは無理矢理ねじ込んだり思い付きで変化させたりするものじゃなく、最初からそこにあった音の事を示すんですよ。質問の多くがこの部分を「特殊なもの」「付け加えたり変化させてよい音」とか、、、。それはアレンジに於ける一つの用法であって使いこなすにはもっと人間の心理と音の関係とかを開拓してからの話し。現段階では、特別でも何でもない、「そこにある音」の事と理解して下さい。

コードには機能がある、、、とよく学校や理論書で見聞きするでしょう。
Tonic, Dominant, Sub-Dominant。,,,,,,,,,,,,guuuuuu.......すやすやすや~。寝るなっちゅーの。これが生まれてるのも実はこの並んだ半音の反発にあります。
つまり、嫌いな音があるわけ。mi-faとti-doの事だよ。

Tonicは「mi」という音が支配していてコードの構成音を見ると「fa」以外の音の組み合わせで出来たコードがそこに集結しているわけ。Cmaj7しかり、Em7しかり、Am7しかり。これらのコードの構成音(以下Chord Tone/CTと略)をdoから並べるとdo-re-mi-sol-la-ti........ほらね。

つまり「fa」が嫌いなわけ。対するDominantは「fa」が支配していてコードの構成音をみると「do」以外の音の組み合わせで出来たコードが集結している。G7しかり、Bm7b5しかり。

これらのCTを集めるとre-fa-sol-la-ti........ね、あらあら丁寧にもTonicを支配する「mi」まで嫌ってるよ。ま、しかしmiのすぐ下のreとの間は全音だからそんなに嫌いなわけでもなさそうだけどね。

ところがSub-DominantになるとTonicが嫌う「fa」もDominantが嫌う「do」も自分の構成音として持ってるじゃないですか。Dm7しかり、Fmaj7しかり。つまりSub-Dominantはこの反発し合う両者の潤滑油みたいな性質になってるわけ。それが証拠にSub-DominantのCTの隣(つまり上)には決して反発する半音が来ない。Dm7のCT以外の音はmi-sol-ti、Fmaj7のCT以外の音はsol-ti-re。ね。自分自身で調和しちゃってるというか、ノンポリというか、懐が広いというか、八方美人というか..........。いづれにしてもTonicとDominantにとっては都合の良い相手なんだね。

さて、移動ドとするのには理由があって、この上の説明ではコードは実音名、構成音及び階名は移動ドとしてるんだけど、KeyがCだからさして意味のないように思われるかもしれない。ではCとかDとかをやめて、ダイアトニック・スケール・コードを数字に置き換えてダイアトニック・スケール・コードの性格分類をまとめよう。

・Tonic:Imaj7 IIIm7 VIm7 
・Dominant:V7 VIIm7b5 
・Sub-Dominant:IIm7 IVmaj7

I=do II=re III=mi IV=fa V=sol VI=la VII=ti という事だね。

メロディーは跳躍の他に全音と半音が交わいなから動いてゆくもの。半音というのはとても重要。メロデイーに半音が入るとコードの機能変化を呼び起すわけです。単純に長調でmi-fa-ti-doという完結したメロディーを作って、その一つ一つにコードを付けるとなると、どう考える?


・メロディーの音が反発しないコードを選ぶ。

するとImaj7-IIm7-IIIm7-IVmaj7......(?)ちょっ、ちょっとまて、これってもしも完結するとなると何かヘンだぜ。終わってない感じしない?原因は何だろ? 

コードの機能を見てごらん。最後がどっちつかずのSub-Dominantじゃん。この後が続くならいいけど、完結したメロディーって事になると中途半端だよね。機能をみるとTonic(以下T)-SubDominant(以下SD)-T-SD。TonicとSub-Dominantしか使ってないじゃん。Dominantは嫌いなのかよぉ---。

じゃImaj7-IIm7-V7-Imaj7。どうだ、これで。完璧じゃん。って、、これだけじゃないよ。つまりメロディーの音が反発しないのであればいいわけ。もちろんVIm7-IIm7-V7-Imaj7だっていい。

じゃ同じメロディーでこれを完結しなくても良いとなるともっと幅が拡がるように感じるよね。

IVmaj7-IIm7-IIIm7-VIm7。うん、いいねぇ。ちょっと哀愁入ってる。。

IIm7-VIIn7b5-IIIm7-VIm7 よしよしこれも泣けるかもしれない、、、、

って、おいおい、これらはいつの間にか短3度下のマイナーに転調しちゃってるぞ。そうなると長調ではmi-fa-ti-doって読んでたメロディーをsol-le-re-meって読み替えなきゃならない。短調であっても基音はdoから始まるから。よってこれらは「良いけれどもココでは間違い」って事になるんだ。

曲というのはこのように音と音の結び付きで成り立っている。従ってコードも同じように半音の反発との関係を考慮しながら存在している。もしも曲の中でいくつかのm7コードを見かけたとしても、それらには個別の形が存在しているわけ。m7コードだけでも3種類/2機能あるわけだよね。どうしても初歩の段階ではコードの構成音に気が行って実音で物事を考えてしまうのだけど、最初の段階でここに述べた事を理解してからもう一度コードに向かって「移動ド」で復習してみよう。きっとその単純な仕組みが分かるはず。

ここに書いた事で長調に於けるmaj7thコードとm7thコードの性質は理解できるんじゃないかな。インプロをやる場合にこれはとても重要な事なんだ。

次回はドミナント7thコードについて少しヒントを出します。曲は長調だけじゃないし、曲の中では微妙に転調している事もあります。ドミナント7thコードはそれらを暗示する役割を持っているのでジャズの中では特に多用されています。しかし、そのメカニズムは基本さえ押さえれば決して複雑ではありません。それまでにドミナント7thコードのコードスケールが持つ半音について予め考察しておくと良いでしょう。やはりキーワードは「半音」の形です。

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(2)ドミナント・セブンスコードに強くなれ.............隠された変化を見逃すな!・その1

ドミナントコードというとV7がもっとも親しみのあるコードだと思う。音名の横に7と書けばすなわちドミナントコードの出来上がり。C7,D7,E7,F#7,Ab7,Bb7,,,,,,,といった具合に。おいおい、それじゃあ何処でも何でもドミナントになっちゃうじゃないか。調性の事を(1)でタラタラと説明してるのに、そりゃないぜ~!  まぁまぁそう結論を急ぐんじゃない。

こんなの見た事ないですか? 

||:C7|F7|C7|C7|F7|F7|C7|C7|G7|F7|C7|G7:|| 

知ってるよブルースだろ、そんなの序の口さぁ,............そう思う人も多いよね。ジャズやるんだったらブルースやりなさい! とか、まるでバッハのインベーションをハノンに続いてやらされるように.........。フム、確かにそれは言える事なんだけど、アドリブと理論を同時に始めると、ちょうど同じ時期にTonicがうんぬん、Dominantがうんぬん、、と理論で説明されて、その足でアンサンブルやセッションに出かけたりすると「オッケー、じゃブルースからやろう!」なぁ~んて始まっちゃう。

「こういうリックを使って、ほら、一つの節まわしでブルースになるだろ?イェ~ィ!」な~んて始まっちゃうと、さっきまでドミナントがどうの半音の動きがどうの、、なんてやってた事はすっかりスっ飛んじまうわけ。そんでもって翌週の理論の時間に「すんませ~ん、ブルースは全部ドミナント・セブンスコードで出来てるンですよねぇ?」な~んて西洋音楽史を根本から覆すような質問を浴びせ、1週間分の理論の授業をリバースモードにしちゃったりする...........(笑)。
確かに矛盾してるよね。じゃあコレはどう説明するのよぉー、なんて攻めないで。

ドミナント・セブンスコードとCTが同じこれらのセブンスコードはひとつを除いてドミナント・セブンスコードじゃない。ドミナントの代表格はV7、つまりそのKeyの5番目の音を根音(以下ルート)に持つもの。だからこの中では「G7」だけがドミナント・セブンスコードになる。じゃ後のセブンスコードは何ぁ~に?って思うよね。この時点でもう理論とはお別れします、、ってちょっと待って。

(1)で繰り返し曲には調性があると述べた。それは固有の音階でできる事も教えた。長調と短調ね。でも世界にはいろんな固有の音階を持った音楽があるんだ。まずガイドになるのはコードの構成音を集めるって事だったよね。じゃ、ブルースを演奏する前に、これをやらなきゃ。

Cのブルースで使われる最もベーシックなコードは上記の3種類。C7とF7とG7。少なくともこれらの構成音は曲の中で使って文句は言われないだろう。Cから順に使われる音を並べるといいわけだよ。移動ドで書きます。

do-re-me-mi-fa-sol-la-te-ti。

おやおや9個もある。ヘンだよね。
ううん。これはきっと何かの法則で一部の音の使用に制限をかけないとなー。長調という事は分かってるから長調にない音だけを色づけしてみよう。

「do-re-me-mi-fa-sol-la-te-ti」。

次にルートの音だけをみるとコードの性質を見抜く事ができるかもしれない。
すると

「|-IV-I-I-IV-IV-I-I-V-IV-I-V」。

これを機能に当てはめてみると曲の構成を予測する事になるかもしれない。すると「T-SD-T-T-SD-SD-T-T-D-SD-T-D」。なんか上手い具合につじつまが合ってきたゾ。じゃ調子にのって一気に結論に飛び込もうか(笑)。

普通オクターヴの音階は2つの半音を含んだ7個の音階で出来てる。ディミニッシュのように半音が多い場合は8個の音階で出来てる。このブルースの場合は現在9個。少なくともナニガシかの調性を持っているからには「反発」しあう音がふくまれてるわけだよ。それを割り出してみよう。

Tonicの時は「fa」、Dominantの時は「do」が嫌いだといったよね。
じゃTonicの時って「do-re-me-mi-sol-la-te-ti」になるぞ。
Dominantの時は「sol-la-te-ti-re-me-mi-fa」。
フムフム。ありゃりゃ?これは偶然にも形がまったく同じ音階が出来てる。

「do-re-me-mi-sol-la-te-ti」
「sol-la-te-ti-re-me-mi-fa」。

じゃSub-Dominantはどうなる?「fa-sol-la-ti-do-re-me-mi」。ほう。。ちょっと違うよね。でもIVmaj7の時に「反発する音がない」と書いたでしょ。この場合構成音の4番目の音、すなわち「te」を省略して「ti」になってるから偶然にもその論理がこの形には有効になるね。すると残るはコードで示したb7thと実際の調性に存在する7thのつじつま。どうする?

もう一度TもDもSDも見直してみると、何か気付かない? 7thをb7thに換えて考えると7個の音階になってる!

Tonicは「do-re-me-mi-sol-la-te-do」。

じゃさっき疑問符を付けたDominantはどうする?これは元々b7になってるから他を考えるとすれば「re-me-mi」の半音だよね。

じゃ「me」を省略すればどう? 

「sol-la-te-ti-re-mi-fa-sol」うん。Sub-Dominantは「fa-sol-la-ti-do-re-me-fa」。
これですべて7個の音階になったしコードとも一致するでしょ。少し霞みが晴れたかな。

そして、最初に言ったように、この場合「拾わなかった音」がたくさんあるよね。これも絶対に使っちゃダメなんじゃないんだ。慣れてきたら使うべし。しかし、慣れない内から使うとパニックになる。もっとブルースについて学ぶ場合はブルーノートという名称で喚ばれるブルース固有の音やブルーノートスケールについて学ぶ必要があるが、ここはセブンスコードの話しなので省略する。(ブルースに関しては実に多くの著書があるのでこれを機会に是非参照されたし)

上記のようにセブンスコードはドミナント・セブンスコード以外に見えるものがたくさん存在していて、なかなか理解に苦しむんだけど、それをどのように解釈すれば良いのかを自分のテーゼとして持ち合わせれば、難しい用語を暗記するよりも自由に音と戯れる事ができるわけだ。元からそこにあった音を自在に使えるようになる為には「基本」と「応用」の境目をしっかり見極める必要があります。

じゃあ最初のC7はIだからI7とかIV7って書かないものなの?.............。そう、時々そう書いてある本とか見るよね。コードの形と機能を一緒に表現しちゃった例だね。
だからブルースの場合は||:I |IV|I |I |IV|IV|I |I |V7|IV|I |V7:||って機能和音では表記する方が誤解がないよね。

結論。ブルースは7thコードで出来てるけど、実はV7以外はドミナント・セブンスコードではない。これはブルースという特殊なスケールを使って出来ている音楽だからコードの形を表現する時にその特徴あるブルースのスケールや特徴ある響き(ブルーノート)を予めセブンス・コードとして書き表しているんだ。

しかし、この事は後々ジャズが発展する時に「応用」という形で様々なドミナント・コードの展開や置き換えのヒントとなって来るのでとても重要な意味合いがある。
さあ、次はマイナーについてドミナントの仕組みを考えてみよう。長調のドミナントと短調のドミナントってなんか違うよねぇ。。。。


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(3)ドミナント・セブンスコードに強くなれ.............隠された変化を見逃すな!・その2/HMP5の考え方を知ろう

和声的短音階って言葉知ってます? クラシック系なら短音階には自然的短音階、旋律的短音階、そして和声的短音階って3種類の音階がまず基本として説明されたはず。ジャズ系でも同じ事をナチュラル・マイナー、メロディック・マイナー、ハーモニック・マイナーとスケールの種類で説明されてるよね。ううん。寝てたって人も多いか(笑)。

これらの音階の説明の時に「和声的短音階(ハーモニック・マイナー・スケール)は人造的に作られた音階だぁ」と説明を受けた人はまだいい。英単語の丸暗記みたいにしちゃった人はココからが重要だよ。

なぜそんな人造的な短音階が必要になったのだろう????? 義務教育の時点で僕はふむむ、、、と思ったけど、音楽の先生には聞かなかった(笑)。後にこれで随分悩んださ。。。(怒)
まず階名で自然的短音階のスケールを書いてみよう。 

do-re-me-fa-sol-le-te-do。 

母音が変化してるよね。これは長調の階名と比べると半音低い音程だからそうなるんだ。次に和声的短音階を階名で書いてみる。 

do-re-me-fa-sol-le-ti-do。 TeがTiに戻ったね。

旋律的短音階は、、、ここではまだ必要じゃないから省略。

この自然的短音階を使って長調の時と同じように3度(長短を含む)毎にオクターヴ内の音を「拾って」和音を作ると次のようなコードが出来上がる。これがマイナーのダイアトニック・スケール・コードになる。

Im7-IIm7b5-bIIImaj7-IVm7-Vm7-bVImaj7-bVII7。 

III とかVI とかVII の前にフラットが付くのは長音階の時のルートの音よりも半音低いからだよ(機能は長調と同じ)。
さて、この中でドミナント・セブンス・コードというと、、

まずbVII7が目に入るでしょ。機能的にもDだし。じゃ、次にV度を見ると、、、

あれれ、Vm7になってる。少しでもマイナーの曲を演奏した事のある人ならわかると思うけど、

Vm7-Im7とかIm7-IVm7-Vm7とか弾くととてもマイルド。

曲の最後の部分でTonicに進む前とかにVm7が入るとスムーズだし「人知れず終わりたい、、」な~んて時にはいい。
が、しかし、インパクトを残す時にはV7が使われる事が多い。

「なるほど、分かった! だからハーモニック・マイナーが必要になったんだ」。

うん。そう思う人は鋭いかもしれない。じゃ、なぜ? なぜそれが使えるの? 。。。。。。。困ってしまうよね。アドリブやってる時も確信がなくなるよね。「取りあえず」な~んてやってたらミュージック・チャージ返せ!!って言われるかも。。

マイナーのKeyでは自然的短音階が基準とされる。注目すべきはその音階の半音の位置だ。長調の場合、反発し合う音、つまり「mi-fa」と「ti-do」の使い分けをやったと思うんだけど、これらは機能を司る音なんだ。

だからV7-Iって時に「fa-mi」「ti-do」と半音で動く事によって落ち着く先が示される。「トライトーンの動き」って知ってますか? 各コードのCT,3rd(bも含む)と7th(bも含む)をハーモニーの流れの骨格として繋いでゆく手法なんだ。この中でも特に重要なのはリーディングトーンといって半音同士の動き。導音という言葉をかすかに覚えてる人もいるよね。

トライトーンがリーディングトーンを含む場合はその次の動きがとても重要になってくる。ここには半音の連結、つまり上行導音と下行導音が潜んでいるからだ。この動きをアドリブや伴奏で上手く使わなければコード感がでないわけ。そんな重要なものだからDからTへの進行などでは半音の動きに注目しなきゃ。この動きの事を「解決する」なんて言ったりするよ。

さて、そろそろ拾わなかった音の話しをしなきゃね。CT以外の音、これすなわち「Tension」と呼ばれる音なんだけど、Imaj7のコードスケールを基準に(つまり長音階と一致したもの)名称が決まっている。

CTはRootからのインターバルで示されこれらはオクターヴ内なので1(root),3rd,5th,7thの名称。
これがV7になるとsolがroot,tiが3rd,reが5th,faはb7thとなる。
IIm7であればreがroot,faがb3rd,laが5th,doがb7th。

つまりそれぞれのコードの始まる音からの(これがコードの根音=root)音程度数を示しているわけだ。長音程と完全音程には何も付けない。短音程にはフラットを付ける。

IVmaj7の第4音のような増音程(通常は完全4度)にはシャープを付ける。で、拾わなかった音はCTの間にあるわけだから2,4,6,とすれば良いんだけど、倍音との関係やコードでもsus4というものがあって、これらとの混同を避ける為に9.11.13を使っているわけ。

両手で足りないって?じゃ2,4,6をそのまま9.11.13と読み替えればOK。やはり基準は長音階だからImaj7の時のreは9th,faは11th,laは13thと呼ばれる。この音程よりも低くなるものはフラットを付けて高くなるものはシャープを付ける。例として....IIIm7の場合ならfaはb9th,laは11th,doはb13th。微妙に変化してくるから要注意。

で、基本的にmaj7コードとm7コードではCTの全音上にある音であれば「響く」とされコード感を損なわないが、CTの半音上の音は「反発」するのでコード感を損ないやすい。これを使うにはメロディーの骨格を明確に組み立てられるようになってからにしよう。アプローチと言う方法でやがてそれも使いこなせるようになるはずだからね。

ところがドミナント・セブンス・コードはやや複雑。マイナースケールの3種類を見ても分かるようにちょうどV度から上でスケールに変化が起こる事が多い。これらを使いこなすにはその仕組みを理解しなければ、いつも一つのリックで通過するだけで自在に音楽表現と結び付けられないんだ。

半音が重要と述べたよね。
じゃ、マイナーの時にVm7からIm7に進行してなぜインパクトが弱いんだろう? 

自然的短音階を書いてもう一度半音の位置を確認してリーディングトーンとなりうる音と、その音の動き方を理解しておこう。 do-re-me-fa-sol-le-te-do。 この「re-me」と「sol-le」が半音だ。この半音がどの向きに動くとImで終わった感じになるかな? 

そう、Imになるのはmeとsolの組み合わせしかないから「re→me」「le→sol」としないとImの響きにならないよね。これがマイナースケールの時のリーディングという事になる。

じゃ、コードはどうする? Vm7-Im7でもいいけど、Vm7の時に「le」はb9thとなって「反発」しちゃう。だからVm7-Im7の時はこのb9th「le」は封印しちゃった。するとトライトーンで考えると「fa→me」と「te→do」になっちゃって機能的にD-Tの進行なのに全音で結ばれてしまう。お互いに「響きあう」音同士で結ばれるからインパクトがないわけだよ。つまりマイルド、おとなしい感じ。

でもインパクトを求めるならリーディングトーンを使って半音同士を動かさなければならない。。。。。 さ、サクサク行くぞ。そこでこの「le」つまりV度の和音からみたb9thの位置にある音とドミナント・セブンス・コードの形(つまり構成音CT)の両方を持っている都合のよいスケールってないものか?

そこで登場するのがハーモニック・マイナー・スケール。救世主だ。 

do-re-me-fa-sol-le-ti-do。

誰が考えたんだろね。solもあるし、tiもあるし、reもあるし、faもある。さらにleもあるじゃん。そこでこのハーモニック・マイナー・スケールの5番目の音から始まるスケールを導入すると、この問題が全て解決するわけですよ。sol-le-ti-do-re-me-fa-sol。ね。もちろんコードとして使う時はDominantの嫌う「do」つまり11thを省略するんだけど、ドミナント・セブンス・コードの形であってb9rhが「拾える」スケールなんだよね。これならIm7に進行する時にリーディングトーンの動きが明確でしょ?

このスケールの事をハーモニック・マイナースケール・パーフェクト・フィフス・ビロウ、、、というお経のように長いお名前が付いているんだけどHM5でもHMP5でも省略して覚えるといいです。意味は「完全5度下の和声的短音階」ってそのまんまじゃん(笑)。また、このリーディングトーンの動きは短3度上の長調のリーディングトーンの動きとまったく同じなんだね。なぜって? 調号が一緒なら半音の位置は同じでしょ?

さあ、こうなって来るとドミナント・セブンス・コードにはいろんな「理屈」が通用するようになって来るんだ。トライトーンという事で考えるとドミナント・セブンス・コードのトライトーンとディミニッシュ・コードのCTのroot-b5th、b3rd-6th,と同じだし(これは2音間のインターバルが共通している為)、よってこれらは組み合わせてドミナント・セブンス・コードの代用または展開(コンビネーション・ディミニッシュ)として今日多用されているわけです。コードスケールを割り出さなければアドリブも安心して出来ないって事だよね。

ふうーっ。ちょっとお腹いっぱいだね。休憩しましょ。
次はアプローチについてやりましょうか。ここまでの事をよく理解しておいてね。もちろん楽器を使って!

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■アプローチをGetせよ!
あらら、、、ちょっと休憩のつもりが前回の更新から1年半も経ってしまいましたねぇ。。。スマソ!

ドミナントコードはいろいろな変化球を伴うという事を前章で述べましたが、理解できましたか? コードがそれぞれのキーで持つコードスケールというものは常に調性と繋がっているのです。その仕組みが見えてきたらインプロをやってみましょう。自分で調を決めてその調号以外に派生音を使わないで出来る即興。時々立ち止まって和音を作り、そのコードスケールを検証すると良いのです。

ピアノを弾く人はハノンって指の練習に使うでしょ? ドミファソラソファミ・レファソラシラソファ、、、ってやつ。その要領でコードのroot(根音)と定めた音からオクタ-ヴ上までのスケールを割り出す、これがコードスケールの意味を感覚的に正しく理解するトレーニングにもなります。もっともハノンは思いっきりavoid(省略)noteを強調する形もあるので和音の感覚というよりも調性の中での指の練習でしかありませんが、調性の成り立ちに触れるもっとも単純な出会いではあります。

■Approach (note/chords)

アプローチは入口とか接近といった意味がありますが、音がそのような意図を表す状況もアプローチと表現します。ジャズの即興ではこれを多用してストーリーを作る場面が存在します。最もその技法が多聴されるのは、C・パーカー(as)らが始めたビーバップと呼ばれるジャズの一領域で、今日のジャズ技法に多大な影響を残しました。

それまでの即興スタイルでは単純なpassing (tone/chord)でしかなかった非和声音を意図を持った自由な入口として発展させたのです(パッシングトーンとは装飾音符と理解して下さいね)。そもそも非和声音の使用に関してはジャズと深い関わりを持つブルースのブルーノートから始まっていると思えます。

C7
ti-do-(fi)-sol-(me)-mi-do-la-(te)

このように後ろにある音に対して半音下にある黄色の音は明らかに意図を持って後ろの音に向かいます。Cのブルースなのでこのメロディーではカッコ( )の音はブルーノートで本来臨時記号によって識別されるので分かりやすいでしょう。つまりコードトーンに吸収されるものなのですが、この特徴ある音をそのまま残す事でコードによるフォローが無くても独特の余韻を生む事もできるわけです。

C7
[re-ti-do]-[fi-la-sol]-[me-fa-mi]-[do-la]-te

少し手を加えてみました。先程のコードトーン・メロディーに対して半音上または全音上のコードトーンを組み合わせたもので、動きは複雑になり音符的には増やした部分が三連符的なニアンスになります。[ ]のくくりが1拍のイメージかな。
重複も含めてこれを16分音符にまで細分化してみましょう。任意に半音上の非和声音も取り込みます。

C7
[ra-ti-do-la]-[te-fi-la-sol]-[me-fa-mi-do]-[ra-ti-do-la]-te

このように入口を幾重にも持つ事によって、表現の自由度はリズムも含めて増してきます。目的地をしっかりと意識する事によって入口と経由するコースはダイアトニックな領域から徐々に開放されて行きます。しかし、入口と経由があまりに複雑化されると調性を逸脱してしまう危険性もあります。ビーバップが技巧を飛躍的に発展させると技巧重視が為にしばらくすると「どの曲もテンポが違うだけで同じに聞こえる」という弊害によって衰退して行った事も忘れてはいけませんね。

長年ビーバップというものがどういう経緯で曲として生まれるものなのか理解出来なかったのですが、「Twist Flower」(アルバム「SIX INTENTIONS」に収録)を作曲する時に、それまでと違った作り方をやって初めてわかった事があります。

それは、メロディーとコードを同時に描くのではなく、まずメロディー単独でビーバップ風のものを描き、その時にベースラインだけ同時に作りました。つまりコードをまったく意識しないで2声で作ってみたわけです。それが出来上がってからベースラインとメロディーを基軸にコードスケールを当てはめてコード表記の選定を行い完成させたわけです。

しかし全体のまとまりを考えると満足するストーリーにならなかったのでブリッジ(Bセクション)の部分は従来通りメロディーとコードを同時に描く方法で作りました。その時に思ったのは、ひょっとしたらビ-バッパ-達は演奏としてコードではなくベースラインを連想しながら反応していたのではないか、、、と。

コードが確定されるとコードスケールに支配されるような錯覚もありますから、それをあえて無視するようにベースの単音に対して奮闘していたような気がしました。そう思ってみるとビバップの曲の大半がオリジナルのコード進行ではなく、既製曲からの借り物であった事が理解できたのです。だから演奏に際しては、ベースラインと共にストーリーを描く事によって、「らしさ」が生まれるのかもしれません。そんな耳でビーバップを聴いてみると面白いのでお薦めします。


■Approach (Motive-I)

アプローチは何も細かい意図ばかりではありません。即興演奏は常に動機(Motive)をコードの流れや曲の印象に持ち込む事から始まります。その為には音に対する敏感な反応を楽器を通じて持つ事が大切です。ちょっと理論は面倒だけど、ある程度の知識を持てばアドリブだって編曲だって作曲だって出来てしまうのですからそれを最初に意識する事が入口であり、動機であるわけですね。

大きな(大雑把とも言う/笑)部分で自分が感じた動機となる素材について少し書きます。これは論理的ではなく感覚的に受けとめて下さい。もちろん僕とは異なる感覚を持つ人がいて当たり前ですから抽象的に感じる部分は自分流にまとめてみる事を勧めます。
っま、とか何とかエラソーに書いてもしょせんジャカスカジャカスカのジャズですからこの部分は「ヘェー、そんなん思っとんのやな-」(何で関西弁??)程度で、、ね。

突然ですが、僕は音階やコードスケールの例えにギリシャ音階名を使うのを嫌っています。演奏する曲と関係ないからです。だからここまでの説明にも使っていません。しかし、今回はあえて使います。色に名称があるのと同じ感覚で受けとめて下さい。そしてそれはその程度の意味しかない事も今後忘れないで下さい。

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▼ダイアトニックなコードスケールの私的分類法

なんじゃ?そりゃー、ってツッコミはナシね。一つの曲の中にはハノンのように調の音階の基音から順次7つのコードスケールが平行に並んでいると思ってみましょう。

Imaj7-IIm7-IIIm7-IVmaj7-V7-VIm7-VIIm7b5。長調ならこうだよね。

演奏する時に、いちいち機能が何で、この音は何処に属して、、なんて考えてる余裕はないんだ。それらはあくまでも予習の段階で曲を眺めている時に描く事であって、演奏中はもっと他の事に集中する。つまり音の並んだ形ではなく音の並んだ響きを自分でイメージする事。これが即興演奏では大切だと思う。では、この私的分類とは一体何か?

タイトルに掲げる動機(Motive)は、音に触れた瞬間に何かを感じて発するという事になるよね。そこで僕は何に感じているのか最初の頃に考えた。それを少しずつ整理すると自分が受身として得る音階の印象に辿り着いたんだ。何でこのサウンドって恍惚とするんだろう?とか、どうしてこのコードを弾くと気分がこうなるんだろう? とか。

まず最初にやったのは何処にでもある長調の中に出来る7つのダイアトニックなコードスケールの印象をまとめる事だった。

よく理論書に出て来るギリシャ音階、名前が名前だけに何だろうと思う人もいるよね。
そもそもこれがジャズの世界で用いられたのは、演奏中に

「おい、ここのEm7に9thは入れられるのか?」
「いやいや、これはIIIm7だから、ねーよ」
「ふむ、何でねーんだ。俺は9thが好きだ」
「好きでも何でも、お前さんがそこで9thを入れたらぶちこわしなのサ」
「何で?」
「だからよー、ドレミファソラシドって調だからよー、ここはミファソラシドレミになるだろーが」
「なるほど、ミファソラシドレミに俺はファのシャープを入れたいとほざいてたんだな、でもよー、いちいち音階を言うのも面倒だな、何か簡単な暗号でもありゃーなー」
「そーだなー」
「だしょーーー」、、と言ったかどうかは別として、

ある程度の範囲であれば調が変わっても同じ配列で音階が並ぶわけなのでこの7つのダイアトニック・スケールに名称を付けたというわけ。これはコードネームで和音を表記する事と同じ「お約束」なんだね。では、それをどのように分類したか。実は音階の響きを「明るい」から「暗い」という風に自分で選り分けてみたんだ。この感覚は人によって差異があるかもしれないから「楽しい」空「悲しい」でもいい。ほら、よく長調のメロディーを短調に変えて遊んだ事ってあるでしょ? あんな感じなんです。

★私的・明るいコードスケール・ベスト7!(って7個しかないんですけど、、)

1.LYDIAN (応用するとIVmaj7の形)
2.IONIAN (応用するとImaj7の形)
3.MIXOLYDIAN (応用するとV7の形)
4.DORIAN (応用するとIIm7の形)
5.AEOLIAN (応用するとVIm7の形)
6.PHRYGIAN (応用するとIIIm7の形)
7.LOCRIAN (応用するとVIIm7b5の形)
(このランキングに対してのクレ-ムは一切受付けません/笑)

なぜこんな分類になったのだろう? と、しばし眺めてある事に気付いたんだ。それはMaj7のスケールでもコードトーンから見て次の音が全音になるものが多く含まれるほどより明るく感じ、第7音が6音の全音上にあるものが明るく感じ、第3音が短3度のものでもコードトーンの全音上に次の音が多く含まれるほど明るく感じるという。

これを感じてからはコードのいろんな表情について意識が働くようになった。曲の中でもそれはコード毎に変化しているわけ。それがまず一つの動機としてあると、即興に挑む時にストーリーの入口を作りやすくなるんだ。また、その曲自体がどのようなニアンスを持って演奏すべきかもキャッチ出来るようになる。そう考えると、もう、どの曲も同じ演奏なんて言わせないよ。

一つの例としてコードの組み合わせで印象が変わるというものを。

Key of A
||Dmaj7|C#m7|Bm7|Amaj7||

ベースラインが調性に沿って下降するタイプの曲と仮定して下さい。この2小節めはIIIm7なのでPHRYGIANになるよね。ランキングで見ると全7位中の第6位。ふむ、、ほかの3つのコードは4位以上の明るい指向を持っているのにコレだけがかなり暗い響きになる。そう思って演奏するのも良いが、こう変えて明るい印象のまま演奏出来る方法もあるんだ。これはアレンジの領域の話しだけど、似たような進行の場合、意識を変えて即興に挑むと良いわけです。

||Dmaj7|A/C#|Bm7|Amaj7||

注:2小節めはAmaj7の転回形ですが、このような場合7thの音を省略して表記する場合があります。しかしコードスケールは通常のAmaj7(この場合はImaj7)と同じになります。コードネームは音符と同じ意味を持つので表記されない場合は和音に7thを含まないで演奏しましょう。但しドミナントコードの場合でもb7thを省略するので、予め7thを省略されたコードがいづれのコードなのかを分析しておく必要があります。

では、次回はMotive-2として、コードの中で動機を作る事をやりましょうか。
その前に、ココで一服・・・・
2004年4月記
2006年冬休み特別講座(おせちもいいけどインプロもね) 
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■Approach (Motive-2)

と、一服していたら、、、、ナ、ナ、ナント!  1年7ケ月も過ぎてしまった。。。。。い、いかん、(>.<)
年が暮れない内にサッサと再開しましょう。抗議のメールが届かない内に、、、ヤバ、もう溜まってたりするんだけどね。
ココまでに、触れた事で簡単な旋律の母体を作ってみましょう。ポイントは次のお約束を守って「根拠」を持ちながら「移動ド」と「相対音感」を磨く、デス。

(1)曲の調性を理解し、一時的な転調も含めて各コードのコードスケールを割出す(優先順位はメロディー音、コードトーン、調号、前後のハーモニー的な繋がり/但しメロディーの装飾音符は除く)

(2)各コードスケールの半音の位置の確認
これをベースに何から手をつけるか? 次のようなMotiveを各コードスケールの中で見つけて弾いてみましょう。

▼半音を挟んだ3音列によるMotiveをメロディーに発展させる
調号を持つ音階やコードスケールには必ず二箇所に半音程が含まれています。全音程は階段をトントンと昇ったり降りたりするのと同じで長2度の音程に繋がれ「安定」を感じさせる響きがしますが、これだけでは済まされないのが音楽の七不思議、階段をトントントンと昇降していると時々段差の低い半音程に出くわすのです。

音階の練習をすればわかると思いますが、ちょっと厄介。何も知らずに階段を昇降しているとコレでつまずいて骨折間違いなし(笑)。しかし一見厄介物に見える半音程、実はこれと仲良くなる事がインプロヴァイズをより自信に満ちたものにするのです。とっつきにくい人ほど後々味のある付き合いに発展するのと同じ(?)。たぶん、、、


[どーしてそんな事に気付かない人が多いんでショー]

日本ではなぜか固定ド唱法が重宝がられていますが、これがハーモニーの中を遊ぶ我々インスト演奏する者にとって初期にどれだけ障害となっているかは計りしれません。ただ単なる単音がわかる絶対音感があっても調性を感じる相対音感が無ければコード譜をじっと睨み付けて1音も発せずに終わってしまうのです。

もちろん移動ド唱法に欠点が無いわけではありませんが、固定ド唱法よりは相対音感と音楽理論に沿っているだけ有利なので両方の訓練をお薦めします。鋭い人はピッチに関しては絶対音感と固定ド、旋律と音程に関しては相対音感と移動ド、と考えるでしょう。

で、ココで何をやるかと言えば、半音程を含むコードスケール上の3音列をピックアップして「半音程と仲良くなろう」というのです。


[そーじゃないかなーと薄々気付きながら放置するのは危険でショー]

もともとこの半音程の箇所はメロディーを作る時に(Maj7コードの7thとrootの位置を除けば)コードトーンとコードトーンの間で「できるなら、そのまま放置しておいた方が何となく安心」と思われる音程ですが、この半音程の次に並ぶコードトーンをより引き立ててくれる効果があったりするのです。全音程は「安定感」、半音程は「不安定感」がありますから、全音程が続くと「均一で安定指向」の響きしかしませんが、半音程を経た次の音は「妙に耳に残るインパクト」があります。

ただし本当に「妙に」という響きもあり(これをハーモニーではアヴォイドノートと呼んで和音の響きを疎外する音とされています)、使い方を間違うと「アレレ?」となってしまうので要注意。

1.)まず、曲の中の各コードスケールを割り出し、その中で半音程を中心に前後3つの音列を見つけましょう。

2.)その3音列をコードを弾きながらメロディーとして演奏してみましょう。

例:Key of D の時のEm7なら 半音を含む3音列は E-F#-G と F#-G-A、 B-C#-D と C#-D-E。

Key of Dマイナーの時のEm7(b5)なら 半音程を含む3音列は D-E-F と E-F-G、G-A-Bb と A-Bb-C。

3.)ディミニッシュ・コードの場合は音階自体に特定の調性は無いけど全音程と半音程の繰り返しでコードスケールが出来ているから「助っ人」になるんだ。

例:Key of D の時のFdimでメロディーがC#の時 コードスケールのコードトーンの間の統べての3音列が該当

F-G-G#、G-Ab-Bb、G#-A#-B、Bb-Cb-Db、B-C#-D、C#-D-E、D-E-F、E-F-G。ほらね、ザックザク、お宝の山よ。

4.)音列の並び方を最終音が半音で繋がる方向に並びかえる

例:Key of D の時のEm7は E-F#-G と A-G-F#、 B-C#-D と E-D-C#。
Key of Dマイナーの時のEm7(b5)は D-E-F と G-F-E、G-A-Bb と C-Bb-A、
(コードスケールに二箇所ある半音程だから3音列は各箇所に2つずつ出来るって事だね)

5.)出発音や最終音がコードスケール上のアヴォイドノートとなる場合は上記4.)の定義を除外する

例:Key of D の時のEm7は 上記全てOK。(← IIm7にはアヴォイドノートが無い為)
Key of Dマイナーの時のEm7(b5)は G-F-E、C-Bb-A。

(アヴァイドノートの定義はMaj7コード、m7コード、m7(b5)コードではコードトーンの半音上になる音、Dom7コードは各スケールによって異なるが4thは該当)

これらの定義を使って出来る半音を挟む3音列を使って、既存のコード進行の中でメロディーを作ってみよう。コードスケールの割出しを行い、アヴォイドノートを出発音や最終音に選ばなければ、簡単にコードの形を縫うようなメロディーが出来上る。どんな曲でも練習素材になるからチャレンジあるのみ。

ap1.gif

[1]はこの曲(Key of Db )の各コードスケールに含まれる半音を挟む3音列を同じリズム、同じ音節で並べてみた。Gb7はリディアン・フラットセブン、Bb7(b9)はHMP5、D7(#11)はコンデミ、と設定している。

[2]は、[1]と同じ調性、同じコードスケールを有するとし、半音を挟む3音列だけを使ったメロディーの例。リズムはバリエーションがあるが、一つのコード内(この場合は小節単位)に使われているのは各コードスケール上で半音程を挟む3音列の音のみ。このような形を用いてコードの形(コードスケールの形)に慣れてゆくとインプロヴィゼーションがコードから逸脱する心配はない。

また、同じ調性の中のコード(それらの仲間となる代理コードも含む)がコード進行として選ばれているので、半音の位置がダイアトニック・スケール・コードで均しい位置となっている事が理解出来ると、コードと調性の関係を理解しやすい。つまり調の音階上に出来る二箇所の半音程のどちらかの形が当てはまるコードスケールのあるコードであれば、「助っ人」すなわち代理コードとして非転調仲間に加えて差し支えない、という事。

例えば[1]の一段目の4小節間は同じ3音列を各コードの中でチョイスする事が出来る。Gb7(#11)とEdimはDbのダイヤトニック・スケール・コードでは無いが、均しい3音列を有している事からこれらのコードは代理和音として機能している事がわかるでしょう。これを移動ド唱法で歌うと「re-do-ti」つまり「レドシ」。アガシでもヒロシでもありませんが、まぁ、ちょっと古いですが「ヒロシです」と同じように「レドシです」と覚えておきましょう。

このような形(Motive)を使ってコードの流れと形を「楽に」繋ぐ事をベースとしてインプロにチャレンジすると、初期の段階では結構遊べるものです。もちろん全音同士の連結も加えてみるともっと「楽に」メロディーを作る事が出来ます。自分なりにこの手法を理解してインプロにチャレンジしてみましょう。
演奏する時には必ずマレットを使って半音の所はミュート(ダンプリング)する事をお忘れなく。

ap-2.gif

AP-3では今回のポイント「半音程を含む3音列」を自由(定義の4.を除外)に組み合わせた例です。▲マークが3つ続くところに必ず一つの半音程が含まれています。ノーマークの所はコードスケール上にある音や全音程の部分。実際にはもっと自由度が増えますが、まずは「半音程を含む3音列」を意識的に使ったトレーニングで遊べるようにしましょう。せっかくの年末年始の休暇時間の中でマスターするもヨロシ。もちろんこのクリニックを見た瞬間から即実行。おせちもいいけどインプロも、ネ!
では、ここで再び一服としましょうか。。。 ふうーっ。。おせちもいいけどお屠蘇も、もとい! 練習も、ネ!(>_<ゞ 飲み過ぎに注意しましょう(?)

2005年12月記
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