Archive-10【いい音を求めて】その2. ペダルとマレットダンプニング

【いい音を求めて】その2. ペダルとマレットダンプニング

同じ鍵盤打楽器であってもマリンバではあまり馴染みのないマレット・ダンプニング(Mallet Dampening)。ヴィブラフォンではこのテクニックを習得しないと音楽表現が半減してしまいます。なぜか? それはマリンバの鍵盤の余韻と比べるとヴィブラフォンの鍵盤の余韻はけた違いに長いと言う鍵盤の材質の違いに行き着きます。音が伸びないマリンバがトレモロを駆使して余韻に見せかけた表現を強いられるのに対して、音が伸びるヴィブラフォンには足で余韻を操作するダンパーペダルが備わり、さらにマレットやハンドを使って消音する演奏技術が発達しています。マリンバは音を如何にして伸ばすのかを考える楽器、ヴィブラフォンは如何にして音を消すのかを考える楽器、といっても過言ではありません。
ここではヴィブラフォンのダンプニングの基礎的な奏法をいくつか解説しています。これらの殆どはダンパーペダルと組み合わせて使うので、まずは立って叩きながらペダルを操作するところから始めて下さい。そう、ヴィブラフォンはピアノに最も近い楽器であると同時に、それを立って行わなければならないので、二つの事を同時に行う感覚が必要な少し特殊な性格の楽器でもあるのです。
最初は出来ないかもしれないけど、出来なさを笑いながら克服するつもりで楽しみながら習得して下さい。(2022年7月1日追筆/赤松敏弘)

ペダルは踏み方に御用心! 2014/2/7掲載

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マリンバとヴィブラフォンはよく似ていると言われますが、いくつかの決定的な違いもあります。
一つが鍵盤の素材。マリンバの鍵盤がローズウッドを基調とした木材で出来ているのに対してヴィブラフォンはアルミ合金による鉄材で出来ています。
この二つの違いはひとえに音の伸び方にあります。

木を使ったマリンバの鍵盤は音の余韻が小さく、急激に余韻が減衰するかのように聞こえます。実際には打撃音が伸びないだけで余韻は続いているのですが、一般には“伸びない”とされます。
対してヴィブラフォンは金属である為に振動が長く続き打撃音の減衰も緩やかなカーブを描いて持続されます。つまり一般には音が“伸びる”とされます。

音が伸びないならそれを補足する技術としてマリンバ独特の奏法にロール(トレモロ)があります。マレットを小刻みに動かして余韻が消える前に次の余韻を足は続けるのです。
厳密には一つ一つ音が切れているのですがそれを綺麗にロールする事で奏法として成立しています。また、楽器の側でもなるべく余韻が続くように鍵盤を加工したり、共鳴管の精度を上げる工夫をしながら楽器が進化しています。

音が伸びるなら伸びるで、今度はそれを意のままにコントロールする技術がヴィブラフォンでは発達しています。一つはマレットや手を使ったミュート奏法のマレット・ダンプニング。発想は単純でペダルを踏んだ状態で任意の音だけ残して後は消すというものです。ゆっくりの時はその仕組みが頭でも理解出来ますが速くなるとなかなかコントロールが反射神経と連動するまでに時間がかかります。
そして、もうひとつがペダルを使うテクニックなのですが、ペダル自体の仕組みは単純ながらどのようにペダルを踏むかはそれぞれバラバラです。

今日はその部分を解説してみます。

っえ?
たかがペダルに「正しい踏み方」なんてあるの(笑)

ハハハ、正しいというのは語弊がありますが、踏み方というのは実はあるんですよ。

っえ? ピアノに「正しいペダルの踏み方」なんてないよーって?

ピアノは椅子に座って弾く楽器なのでおのずとペダルを踏む位置は決まってきますよね。
もしもこれをピアノに当てはめるとしたら、たぶん、「正しいピアノの椅子の調整法」みたいなもんです。
つまり、ヴィブラフォンは立って演奏するのでペダルに対する姿勢というものを考えなければならないのですよ。
意外とみんな見落としがちですが・・・・


■ペダルの種類
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大別するとヴィブラフォンには二種類のペダルが用意されています。

一つは標準のシングルアームタイプ(単にペダル)
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もう一つは横長のバータイプ(U-ペダル)
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もっと横長のバータイプのペダルの場合はアームが両サイドから伸びるダブルアーム式の場合もあります。

メーカーによってそれぞれオプション設定のあるものと標準のシングルアームペダルのみ設定のメーカーがあります。

どちらが良いか、という事よりもバーペダル(U-ペダル)のユーザーがシングルアームペダルの楽器に替えた時に戸惑う部分に、ペダルの使い方、正しくは「ペダルの踏み方」の極意があるわけです。もちろんペダルの無いマリンバの人は言うに及ばず。

それぞれに利点と欠点はあります。

例えばバーペダルだと低音から高音までペダルが横に連なっているので同じ姿勢のまま操作が出来そうです。吹奏楽などに多くみられるタイプなので万人受けするのかもしれません。他の打楽器を並べて演奏するマルチパーカッションのエリアでも他の楽器と同時に演奏する時に利点があるかもしれません。欠点はペダルが重い(左右からの重圧に耐えられるよう頑丈なバネを使っている)事です。

シングルアームペダルの利点はペダルの角度を自在に調節出来るので自分の好みに合わせて固定出来る事です。構造がシンプルなのでダンパーに与える影響が少なく壊れにくい事。欠点は・・・・そう、その欠点とされるところに大きな誤解があるようなので今日のこのテーマとなりました。

■シングルアームペダルの仕組み
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楽器を見るとわかると思うのですが、鍵盤は低音側の幅が広く、高音側の幅が狭くなっています。

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それと同時に立ち位置側から楽器を見ると・・・

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低音側の鍵盤が長く、高音側の鍵盤が短くなっています。

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この楽器の形がペダルの踏み方を決定させるのです。

長い低音側ほど手前に張り出し、短い高音側に向かって鍵盤の端が斜めに並びます。
これは楽器の中央部を一直線に横切るダンパーで消音させる為に、長さの異なる鍵盤の片方を揃えるからです。

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楽器の形に沿ったペダルの踏み方が当然あるわけで、それをマスターしないとペダルが厄介者扱いされてしまうのです。

ペダルは真ん中の基音のA(A=440)の音の真下に踏みしろが揃うのがベストで、これ以上手前に飛び出すと身体が楽器から離れ過ぎ、これよりも奥に引っ込むと身体が楽器に近づき過ぎになります。

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微調整が必要な場合はメーカーに相談してみるのも手です。

通常は真ん中の角度で固定して使いますが、好みによってペダルの角度は変えられます。

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ほぼ真ん中の状態

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やや右(楽器に向かって)に傾けた状態


■シングルアームペダルの使い方
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(1)セッティング
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ペダルは接地面とどのくらいの高さ(間隔)にセットするのが良いか? という質問をいただきましたが、これは好みがあると思います。ただ、後に説明するペタリング・テクニックと合わせて考えると極端に接地面へ近づけないほうが操作しやすいと言えます。

僕は場合は指二つ~三つが目安です。

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また、高めのセッティングでは、ボディーとダンパーを繋ぐ両サイドのアームが踏むとボディーぶつかるようなセッティングは避けるべきです。

もう一つの重要な注意点。

シングルアームペダルの付け根のネジ(本体とペダルを繋ぐネジ)は自分の好みの位置を見つけて固定するためのもので、ペダルを左右ぶらぶらの状態で使うものではありません。
自分の好みの角度にペダルを調整して“しっかりと”ネジを〆て固定して使うのです。
この部分、メーカーによっては左右の角度を数段階に切換えて固定出来るタイプのものもありますが、決して緩々で使うものではありません。

演奏中に緩んでペダルがあらぬ方向に向いてしまったり、最悪の場合は本体から外れてしまうので危険です。
また、ツルツルの靴底の場合ペダルが滑ってしまう事もあります。

意外とこの部分の使い方を誤解している人が多いようなので注意しておきます。

※誤解が生じる理由は次の立ち位置の話しを読むとその誤解が解けるでしょう


(2)踏み位置
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先に述べた通りペダルは真上から見て、Aの音盤の端にペダルの先が揃うのが理想です。

ペダルの形状はメーカーや機種によって様々。

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標準的なシングルアームペダルは幅も狭いので踏む位置は殆ど変わらない(Muser M55)

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踏みしろの大きなワイドタイプのペダルは好みの位置でOK(Musser M55GJ)

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標準は真ん中を踏む(Musser M55GJ)

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  • やや右側を踏む(Musser M55GJ)

ただし、真ん中でも奥深くまで足を載せてしまうのは微妙なコントロール(後述)が出来ないのでお薦めできません
×
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あまりお薦めしない踏み方(微妙なコントロールが出来ない為)


(3)ダンパーコントロール
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ペダルの操作の中には次のようなコントロールが必要で、それらに支障をきたす踏み方は良くないと言えます。

(1)オープン・ペダリング
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完全にペダルを踏んで接地させた状態。長い余韻が必要な時に使う。

(2)ハーフ・ぺダリング
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オープンぺダリングからペダルを徐々に戻すと、少しだけ鍵盤にダンパーが触れて余韻をコントロール出来る位置がある。それがハーフぺダリングの位置で、通常レガートスタッカートなどこまかいニアンスと連動して次のクローズドぺダリングとの間を小刻みに行き来します。ヴィブラフォンを演奏する時にペダルから足が離せないのはこの為なのです。
また、カンピングの時にもブロックコードのニアンス付けとして多用します。

(3)クローズド・ぺダリング
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文字通りダンパーを鍵盤に付けた状態ですが、演奏中はこの状態でもペダルから足を離しません。

これらの操作は繊細な動きを伴うので立奏中は常に身体の重心を片足で取らなければなりません。その為にも「立ち位置」と「踏み方」は重要で、このバランスが悪いと妙に疲れたり、足がつったりします。




ペダルは右足。では軸足は・・・? 2014/5/23掲載

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楽器を演奏する時に、立って演奏する場合は楽器との間隔や姿勢を安定させる為には“軸足”が必要になります。特に足元に制限が無い場合はこの“軸足”の事などさほど気に掛ける事もなく、ごく自然にどちらかの足が“軸”となって演奏する身体を支えてくれます。

そう、それは殆ど無意識の内に身体が反応してくれるのでまったく気にする事などないのが通常でしょう。

ただ、例えば、管楽器の人でも、演奏しながらテンポやタイムを足や膝で軽くするキープする場合、あるいはギターなどで足元にセットしたエフェクター類の操作を足で行う場合を想像してみてください。
たぶん、大半の人が“軸足”ではない側の足をそれらに使いますよね。

そりゃそうさぁ。“軸足”がブレたら元も子もないもの。

はい、まったく同感ですが、、、、
その、元も子もないのが僕の演奏している楽器、ヴィブラフォンなんですよ。

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立って演奏する楽器で、頻繁にペダルを操作する楽器・・・・・
そうなると、これはもうヴィブラフォンの右に出るものはありません。

考えてみるとこれほどアンバランスな姿勢を要求される楽器も珍しい。

一番似ているマリンバやシロフォンでさえ、足元は完全にフリー。マリンバが横方向に膨張して来た(つまり音域を広げて来た)のも、この足元がフリーであった為に可能だったわけです。
演奏しながら音盤に沿って歩けますからね。
時には横っ跳びする人すらも・・・・(笑)

そんなですから、ペダルを操作する“足技”の他に、この“軸足”の事を知っておかなければなりません。

今回はそれと密接に繋がる“軸足”のお話し。

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見ての通り、音盤は低音側が長く、高音側が短くなっています。
これはマリンバもシロフォンも同じで、いわゆる鍵盤打楽器(英語ではMallet Keyboard)は殆どがこの形をしています。

その中で唯一足元に制限がかかるのが鉄琴類。(ペダル式グロッケンシュピールも含む)
つまり金属音盤によって長い余韻が得られる為に、それをコントロールする為のペダルが装着されている。

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このような形状のヴィブラフォンの前に立って、何も知らない人が真ん中のペダルを左右どちらの足で踏むと思いますか?

よほどの事情や都合がない限り、右足を前に出して踏むでしょう。
それは、低音側の鍵盤が大きく自分の方へ(手前に)張り出しているのと関係します。

それをまず第一の前提とすれば、もうこの楽器を演奏する時の立ち位置が判明しますね。
つまり真ん中に立って、右足を前に出してペダルを踏みながら演奏する。
そうなんです。そこまでは誰でもわかる事なのですが・・・・

■軸足は軸足にあらず・・・・・

基本の基はこんな立ち位置になります。

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ペダルは比較的浅め(手前側)の位置を踏む

この段階でペダルを奥深く踏む人も見掛けますが、繊細なぺダリングにはちょっと不向きなので推奨しません。

×
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ペダルに深く足を載せるように踏むと足での細かい操作が難しくなるのであまり良いとは言えません

さて、ペダルを浅めの位置で踏むには理由があるのです。
音でも何でもそうですが、理由の無いものなんて世の中にはありませんから。

まずは連続写真風にご覧下さい。

【1】
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【2】
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【1】→【2】のように低音側へと音盤を移動する場合は特に問題ありません。
固定された位置の右足と、やや後ろに引いた左足。

さて、ここで質問。パンチ

この軸足はどちらでしょうか?


その答えが、演奏しながら音盤を高音側へと移動する次の写真にあります。

【3】
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【4】
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【5】
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再び真ん中の音域に戻ります。

【6】
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もうおわかりだと思いますが、実は演奏中の軸足は右なのです。

正確に言うと、右足の踵(かかと)の部分が軸の中心と言ってもよく、その為にはペダルを浅く踏まなければ身体を支える事が出来ないのですね。

あんまり意識していないのですが、右足の踵で身体全体を支えている、という事になります。

従って・・・・

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このように、完全に左足に体重が掛かり(つまり左足が軸足)、ペダルの上に足を載せてしまうと繊細なぺダリングだけでなく、身体全体を支える事も出来ないわけですね。

右足の踵(かかと)が軸になれば・・・・

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身体全体を支えつつ、繊細なぺダリングを行いつつ、左足が完全に自由になるので演奏中の移動に対する身体のバランスを取る役割が与えられます。

つまり、いつも片足で演奏しているようなものなのです。

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もちろん、それだけでは疲れてしまいますから、疲れたらその時だけ左足を軸にして休めばよいのです。
絶対に片足、右足だけで演奏しなさい! な~んて言わないです(笑)
ただ、この“軸”がどこにあるのかがわからないと、ここで説明した事すべてが無意味になってしまうのですね。

意識として強く“軸足は右”と思ってください。
左足は自由なんです。

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イメージする音を連動した奏法で直結する訓練 2011/5/13掲載

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アントニオ・カルロス・ジョビンのヒット曲“ONE NOTE SAMBA”の冒頭8小節を使った奏法を解説

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“ワン・ノート・サンバ”1~8小節

コードスケールを割り出してモチーフを作るところまで解説した。
それなりにモチーフが浮かぶようになったら、今度は奏法と直結しなければ意味が無い。

コモントーンを軸としたシンプルなモチーフを作った。
そのモチーフにコードサウンドをプラスしてコードを伴うソロへと発展させるところ。

描いた(譜例にしているが)音をどのように演奏するか?

これが一番大きな課題だ。

■奏法はペダルを軸として考える

クラシックのレッスンとジャズのレッスンの大きな違い。
それは「奏法」の伝え方だと思う。

知る限りでのクラシックのレッスンでは、譜面に指示された音をどうやって再現するか、に重点が置かれる。

例えば、ピアノならリヒテルはこう弾いて、ホロヴィッツならこう弾く、クライヴァーンならこうだ、という「お手本」がいくつもある。ここのところの音にはこのような情感を込めて、ここのところのパッセージは冷静に、最後のカデンツでは熱く燃える炎のように・・・・とか。
わりとクラシックの上級向けのレッスンは感覚的なのだ。
それと同時に「こう弾く」という奏法分析も兼ね備えている。

ただ、何かに連れ出て来る「こう」という表現が何なのかは個人の受ける(た)感性が強く作用するので、実際のところ本当のところは・・・・謎だ。
ただし、目に見える奏法(それが運指だったり、手順だったり・・・・)と言った副産物に関しては目ざとい。
「こう」という表現にそれが直結すると言えば心当たりのある人も多いんじゃないだろうか。
クラシックで「音色」にうるさい人が多いのもこれで説明がつく。「こう」の中には「音色」も含まれるのだ。

対してジャズの場合は目に見える奏法は“二の次”だ。
重点が置かれるのは「出す音」(音色ではない)。
そもそも自分で選んだ音を出すのが演奏だから、どうやって曲の中身に入り込むかが最大の課題となる。

外的要因をビブラフォンやマリンバで言えば、
・マレットは2本持つか? それとも4本持つか?。
・硬いマレットにするか? 柔らかいのにするか?。
・プロペラ(ビブラートのファン)は回すか回さないか?(ヴァイブの場合のみ)

これだけだ。

あとは、全て「曲の中にどのように入り込むか」という課題の中に含まれる。
だから、ヴィブラフォンのぺダリングやマレット・ダンプニングといった“奏法”は、自分がチョイスする音と共に存在するものであって、単独で習得しても意味が無い。
クラシック的に「音色」としてそれらのテクニックを用いようとしても、結局「音」が浮かばないと意味が無い事に気付くまで本来の用途を理解していない事になる。
もちろんピアノピースのように、マレットの手順からぺダリング、マレットダンプニングまで譜面に書いて曲とするならわかるが、残念ながらそうなるともうジャズやインプロヴィゼーションとは呼べない領域に入ってしまう。

「真っ先に自分で描く音がなければ、手も足も出ない!」

正しくその通りです。

で・・・・

音を出すイメージはココまで出来上がっています。

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さて、これらの「音」は、ここに書かれた手順・奏法以外で演奏出来ないのでしょうか?

いいえ、
出来ます!

実は発想の段階で、上のように描くのと、これから示す例のように描くのでは、出て来る「サウンド」は大きく異なるのです。

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左手の役割と発想を変えてみましょう。

最初は左手右側でF
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Dm7。右手は右側のマレットを使う(以下同じ)
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2小節目のF。左手で、
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Db7
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3小節目のF。左手で、
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Cm7
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4小節目のF。左手で、
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B7
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カンピング( コード進行に沿って即興的にリズミックな伴奏をする事 )の場合は、如何にソリストのクッションとなるサウンドを4本のマレットを使って出すか?、に集中するものだけど、自分のソロの時のメロディーラインへの瞬間的なコード付けは、なるべく自分の身体を軸として無理の無い位置にあるマレットを自在に使いこなす、という姿勢(フォーム)が備わらないと大変です。

二つとも「まったく同じ音符」なのに、弾いている意識は全然異なるはずです。
特にビブラフォンの場合、ペダルを操作する関係で立ち位置はある程度限定されている(楽器に対する身体の向き、という意味)関係から、自分の身体のどの辺りに出したい音があるのか・・・を探る事から全てを組み立てる訓練が必要になるのです。

では、それをもっと体感的に体験してもらいましょうか。

次の譜例のようなモチーフが浮かびました。
これらの音をあなたは出来る限りクリアーに演奏しなければなりません。
どのように演奏し、どのような奏法を使って音処理を施すとよいでしょう?






ジャズでは必須!マレット・ダンプニング奏法・・・・・コード奏法編 2011/5/20掲載

ジャズの奏法には二通りあって、一つはここでも解説しているコード理論を取り込んだ「即興演奏を行う為のテクニック」が該当する。表現する時に「出す音の根拠」を自分が持つ為の一種のスペック(specification)。コード進行における音と音との組合せに関する奏法で、全てが音感で解決しない時の一種の手助け的奏法の数々でもある。このセオリーは特にビブラフォンやマリンバに限定したものではなく、広く鍵盤楽器、あるいは管弦楽器とも共通する部分が多い。

もう一つは「演奏表現の為のテクニック」で、ビブラフォンやマリンバを演奏する時の「音色の制御」に関する奏法の事。楽器本来の音色に加えて、ジャズで発展した様々な装飾奏法などが当てはまる。これらはヴィブラフォンやマリンバ独自のテクニックが中心。大半がジャズの歴史とともに進化したヴィブラフォンの奏法として述べられるものが多いが、現在ではマリンバの奏法にも影響を与えている項目が多い。

この二つは実に密接な繋がりを持っているので、どちらか一方だけを習得しても威力は半分にも満たない。

ちょうどアントニオ・カルロス・ジョビンのヒット曲“One Note Samba”のモチーフを使った演奏法を解説している途中で、シンプルにハーモニックなソロを演奏する場面に進んだ。
「どの音をどのように使ってインプロの入口を探るか」については先週まで数週に渡って解説したが、これを実際に楽器で演奏する場合、ただ鍵盤をマレットで叩くだけではなく、どうしても習得しておかなければならない装飾奏法がある。マレット・ダンプニングだ。

ビブラフォンでペダルを使って音を伸ばす時に、このテクニックが使えるとよりサウンドがクリアーな表現方法へと繋がる。

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インプロ(即興演奏)の入口はコードスケールのアナライズから・・・
仮定でもいいから自分で一つ一つのコードのコードスケールを割り出す事が先決だ。

コードスケールを割り出したらモチーフを想像しよう。

ここまでが先週の状態。
で、

この状態でペダルを使ってシンプルなモチーフを演奏するアイデアまで辿り着いた。

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まずは各小節の後ろにある音に対してハーモニーを加えた。
この状態では右手(R.H.)でシンプルなモチーフを弾き、左手(L.H.)でコードサウンドを弾くように見える。

しかし、この場合左手と右手の役割が直接的(直感的)で、マレットの使い方としてはバランスを欠いた状態になっている。
そこで、左右のマレットの使い方を再考して次の方法を推奨した。

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これによって左右のマレットの動きは従来の動きとは発想を異にしたアイデアへと向かう事が可能となった。
で、

この段階では、特にペダルのマークを記入する必要もなく、音符通りにペダルを踏んで音を伸ばせばいいわけで、休符とコードの変わり目にペダルを外して消音するのは、ごく自然に身体が反応すると思う。

しかし・・・

次の様な場合は、自然に理解しているつもりでも、楽器の機能上、残念ながらそうすんなりとは行かないのだ。

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今度はコードを各小節の頭に弾くメロディーに付けた。必然的に頭のメロディーに付けたコードはその小節の最後までペダルを使って伸ばす。その間にメロディーは跳躍する。

で・・・・

これをこのまま演奏すると、右手(R.H.)で演奏しているメロディーは、各小節後半に跳躍した音を弾いた瞬間に「和音」になってしまう。
つまり、先の譜例の場合はコードが各小節の後ろ側に付いたのでメロディーが単独で始まり跳躍すると同時にコードも一緒に聴こえるようになっていたので何の問題も無かった。
しかし、今回のケースでは最初からコードが鳴っているので、“メロディーを動かしたつもり”で跳躍した音を弾いても、和音の一部としか聞こえないのだ。二拍め裏の音を弾いた段階で縦に全ての音が並び、左手がコードサウンド、右手がメロディーラインという明確な動きが無くなってしまうのだ。

つまり、メロディー・ラインが「和音」によって埋もれてしまってややボケている。
最初に弾いたメロディーの「F」は次に跳躍したメロディーが現れた瞬間には「消えていてほしい」のだ。
しかしその他のコードの音は「残してほしい」。
「消してほしい」のと「残してほしい」のが同居しているわけだ。

これをクリアーに演奏するのがマレット・ダンプニング奏法。

原理は簡単で、使っていない側のマレットで必要無い音を消すのだ。
これまでにも、このブログでシングルなメロディー・ラインの装飾奏法としてマレット・ダンプニングは解説している(キーワード「マレット・ダンプ二ング」でこのブログ内検索参照)が、今回は残す音と消す音による表現奏法として登場です。

マレット・ダンプニングとは・・・
ピアノを弾けば原理はわかると思うのだけど、要するにビブラフォンのペダルはピアノのペダルと同じ機能があるものの、ピアノの鍵盤を押さえた状態の余韻をコントロールする機能がヴィブラフォンには無い。そこでペダルを踏んだまま残した音で必要な音だけを残して後はマレットで消すという方法が生れた。

残したい音と消したい音が同時にある場合に「ペダル」と「マレットによる消音」を組み合わせて演奏するテクニックだ。

この譜例に「特別に」マレット・ダンプニングを記載すると以下の通り。
通常マレット・ダンプニングは奏者自身が何処で使うかを考えながら演奏するものなので記譜する事はない。(マレット・ダンプニングのエチュード等では記譜するが、それぞれに独自のマークを使って解説しているだけで、記譜法に公の取り決めはない)

【R.H.】× = Mallet Dampening
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この譜例の意味を理解するのには少し時間がかかるかもしれないので、写真解説をおまけします。

1小節目。ペダルを踏みながらDm7。
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ペダルは踏んだままで・・・

右手のマレットが「A」を弾くと同時に、左手のマレットで「F」を消す。
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小節の変わり目でペダルを外して消音。

2小節目。ペダルを踏みながらDb7。
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ペダルは踏んだままで・・・
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右手のマレットが「Ab」を弾くと同時に、左手のマレットで「F」を消す。
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小節の変わり目でペダルを外して消音。

3小節目。ペダルを踏みながらCm7。
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ペダルは踏んだままで・・・
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右手のマレットで「G」を弾くと同時に、左手のマレットで「F」を消す
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小節の変わり目でペダルを外して消音。

4小節目。ペダルを踏みながらB7(#11)。
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ペダルは踏んだままで・・・

右手のマレットで「Gb」を弾くと同時に、左手のマレットで「F」を消す
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出来上がり!
いかがかな?

この譜例を見て、ちゃんと弾けた人はセンスがありますよ!

マレット・ダンプニング理解出来ましたか!
必要だから使うテクニックで、こういうテクニックはこれだけを知っていても何の価値もないのです。




いい音は想像力から生まれる 2018/6/29掲載

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「いい音」のヒントは自分の楽器以外のところに散らばっている。
「いい音」の為なら何でもする。
それは「いい音」を出したいが、そのままでは自分の楽器から容易く発せられないような音の場合が多い。

僕はピアノが好きでヴィブラフォンの前はピアノで何でも弾いていた。するとピアノではいとも簡単に弾ける事がヴィブラフォンではどうやって弾けば良いのかわからない事がたくさんあった。
マレット・ダンプニングはそういうピアノの「いい音」をヴィブラフォンで出したくて身に付けたテクニックだ。
逆に言えば、そういうピアノの「いい音」が自分の中に無ければ、マレット・ダンプニングなどしなくてもいい。叩け、叩け、叩いて表現しろ、だ。

意味の無いテクニックを身に付けても、それを自ら「願望」する瞬間がなければ、ただの見せびらかしで終わる。
マレット・ダンプニングどころかマレットを4本持っている事すら、まったく無意味になってしまう。
そうなると世の中の見た目しかわからない人から「マレットの数がうんぬん」みたいな意味の無い小言を吐かれるのだ。

メロディーの成形にマレット・ダンプニングを使うのは当たり前だけど、その前に僕はピアノで簡単に弾ける「あの音」が出したくて楽器を始めた頃にマレット・ダンプニングの練習を死ぬほどした。結果、その「いい音」を自分のものに出来た。

ピアノでこんな音、弾くのってそんなに難しくないでしょ?

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こうやって、、、、
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こうすれば、、、、ほら、ね、
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ところがこれをヴィブラフォンで出そうとすると・・・・

まず最初に
右手のマレットで
「E」と「A」を弾き・・・
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ペダルは踏んだままで
左手で「F#」を弾きながら右手の「E」をダンプニングで消す
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結構大変。
ピアノで弾く“あの感覚”というのをヴィブラフォンでも失わずに音を出したいのだ。

コードがEadd9になったら・・・

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ペダルを踏んだままで、右手は「F#」と「B」を弾き・・・
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左手で「G#」を弾きながら、右手の「F#」をマレットダンプニングで消す。
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大変だけどここまでは比較的初期の段階で出すことが出来た。
しかし、さらにこの動きを右手のマレットだけで演奏できれば、左手は別の事が出来てピアノを弾くのと遜色のない「いい音」が出せるよね。

Eadd9で実践してみましょう。



いい音は体幹から生まれる! 2018/7/6掲載

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立って演奏する楽器と座って演奏する楽器では、最近流行の言葉を使えば「体幹(どうでもいいけど、僕のMacではそのまま変換すると体感しか出て来ない)」が果たす役割には大きな違いがあるような気が。座って喋るときと立って喋るときでは何かが違うのを感じるでしょ? あれですよ。座ったほうがどこか力が抜けていて、その分他の事に神経が行き渡る気がするのは僕だけじゃないでしょう。
「立つ」と失うものとは何でしょう。僕は(本当に個人的な憶測に過ぎませんが)上半身と下半身とを支える力の配分だと思うのです。座る(楽器の場合は主に椅子に座って演奏するのを想定している)ことによって、「立つ」という重力に逆らう行為の為のエネルギーをカットできるわけですから。手と足の指令系統が分離されるわけです。それが「立つ」というだけの事でそのエネルギーが姿勢を保つ芯のような存在となり、手や足への指令系統はその「立つ」というエネルギーを常に差し引いた状態の中でしかやりくり出来ないわけです。

いやいや、座っているから楽なんじゃないよ、ドラムセットだって手足をバラバラに動かしているわけだし、ピアノやオルガンだって手は鍵盤を担当し足はベダルやスイッチの操作を担当しているのだが、なかなかどうして、座りながらも身体のバランスを取りながら結構大変なんですよ、と。
た・し・か・に。

いや、待て。そんな事を言ったらヴィブラフォンはどうなるんだ?
「立って」演奏していながら、手はマレットを振り回しつつ、足は休む間もなくペダルで音の余韻を調整する為にずーっと動かしてるじゃないか。っえ? て事は、ヴィブラフォンって楽器の中で一番「体幹」が良くないと演奏出来ない楽器じゃね?

そう、周りを見渡してみても、こんなに「体幹」を使う楽器も珍しいわけです。だって立ちながら片足でペダルを操作して、さらに両手は鍵盤の上を縦横無尽に動くわけですから。
あらま! 最近の超流行を一歩先に行ってたわけだ(笑)。筋トレは身体は美しくなるけど、ヴィブラフォンはさらに美しい演奏を奏でられるゾ! ビューティー・チョイスに貴女もどうですか? なんて新手の体幹音楽美容療法でも開きますか!(笑)

この「体幹」とはいつ身に付くのだろう?

実は楽器を始めた瞬間から持って生まれたもののように備わって行く。
テンポが速くなる人、遅くなる人、そんなに変わらない人。
楽器を始めた瞬間からこの三つのどれかに自分が当てはまる。
速くなる人は体幹を訓練すれば「落ち着く」場所を見つけられるし。遅くなる人は体幹を訓練すれば「落ち着き過ぎない」場所が見つかる。
そんなに変わらない人はそのままでいいように思うかもしれないけれど、今度は「起伏」という前後の揺れでリズムに「柔らかく」なる体幹を訓練する。つまり、自分が得意なものと真逆なものをコントロールするスイッチのようなものが掴めて来ると「体幹」の第一歩。

これがピアノやドラムなど座って練習出来る楽器の場合はこのスイッチの見つけどころがたくさんある。手足はバタバタしていても頭はクール。管弦楽器も椅子に座って練習出来るから意外とクールに頭が働いている。

そうなるとマリンバやヴィブラフォンという立って演奏するのが宿命な楽器の体幹を付けるのはなかなか大変かもしれない。ましてヴィブラフォンは片足立ちだ。

冷静さ。
マリンバやヴィブラフォンで体幹がどの程度備わって来たのかを自分で察知するのは、この演奏中の「冷静さ」にあると思う。周りの音の中での自分の位置と意識を明白にする。
えーっ、そんな簡単な事が出来ないの? 要するに演奏しながら聞く耳の事でしょ? なんて他の楽器から言われそうだけど。

じゃあ、あなたは片足で立って、夕べの出来事を喋りながら常に右足を動かして、両手はずーっとピアノを弾く真似をしながらどれだけ冷静に喋れるだろうか?

ブレブレの軸の演奏も、それは感情の起伏のコントロールが少しだけ出来ていなかっただけだ。冷静になればいつでも体幹をコントロール出来るはずだもの。それに気が付くか付かないかはその人次第。

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ピアノで弾くと簡単に弾ける事が、ヴィブラフォンで弾きたくても上手く弾けない。
それは弾くという単純思考で結論を求めるからだ。

発想を変えれば、どんなものでも「いい音」としてこの楽器から奏でられる。

先週のつづきです。

片手に持ったマレットを使って出したい「いい音」を出す。

両手の場合は先週解説しているのでそちらを参考に。

伴奏で左手はコードを弾いている。
そこに Eadd9 を入れたメロディーを補佐するサウンドを弾きたい。

片手に持った2本のマレットをこのように使ってその音を出す。

【One's hand Mallet Dampening=o.m.d】
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驚くほど仕組みは簡単。

僕は譜面にすると Eadd9(↑) と記す事にした。譜面の中の逆向きのやじるしがマレットをスライドする方向を示す。

最初にペダルを踏んで B と F# を弾く。
F#の音がadd9だ。

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このF#の音を隣のG#の音にスラーで繋いで同時にF#が消せればイメージ通りになるよね。

では、ペダルは踏んだままで右手内側のマレットでG#を弾き・・・

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すぐにスライドしてF#を消す。この間ペダルは踏んだまま。

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思い通りの「いい音」が出るでしょ?

じゃあ、逆に 9thに向ってスライドするサウンドも出せるよね。

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僕は譜面にすると Eadd9 (↓)と表してみた。

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ペダルを踏んだまま G# と B を弾く。
そのまま内側のマレットでadd9となる F#を弾く。ペダルは必ず踏んだままで。

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F#を弾くと同時に G# にスライドさせて G#を消す。

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ピアノだと指一つ動かすだけで簡単に出来る事でも、ヴィブラフォンで弾く為には冷静にマレットの組み合わせとペダルのタイミング、さらにマレット・ダンプニングによる余韻のコントロールという三つの事を組み合わせて、やっと一つの音が出せる。

でも、この音が無ければダメな瞬間が自分の演奏イメージの中に必ずあるし、それが「いい音」として音楽の流れをさらに活き活きとさせるものになる。

「いい音」のためなら英知を結集して何でもする。