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【演奏講座】コード奏法・4本マレット

あるヴィブラフォンのレッスンの時に「この曲はネットで調べたらスタンダードの中ではとても難しい曲なんだと書いてあるのを見ました」と。今はレッスンの課題曲が出るとネットで音源を探し、どこかで楽曲解説があれば参考にして、練習して来るのが一般的なようです。本当は自分の知識と感覚と推測能力を高めて参考物などに頼らないのが一番向上します。

しかし、“こんな時代だから”こういう時に調べるというのはとても熱心という印象を持つかもしれませんね。でも、非常に危険。まず誰が何のためにアップしている情報なのかという点がわからないと良し悪しの判断が難しいのと、その情報の出所がどこなのか見えない事。「難しい」という言葉は非常に先入観を植え付けられやすい。なのでその対極にある「簡単」というものへの誘導がそのような文章には見受けられるわけです。「調べる」のは迷っていたり、困っていたりする人だから、その対象者に向けてのこのワードは釣堀の魚に餌を撒くよりも容易く釣り上げられる。もしもこれが書店で売られている本や、CDショップで売られているアルバムだったら意味は変わるでしょうね。注意しなければならないのは、「難しい」というのが一体どこの“だれ”の主観による言葉なのか、という事なのです。

どんな人のレッスンでも、指導者は課題を出す前に最低限の情報を授けた上で出すでしょう。いきなりポンッと何の手掛かりもないものを出すというのは余程のマスタークラスじゃない限りあり得ない。ネットで調べる前に自分に与えられた情報をしっかり復習してみる事です。あなたにとって「難しい」事が、他人の言う「難しい」と一緒とは限らないのです。そもそも、ジャズなんて他人と同じで出来るわけがないじゃないですか、ねぇ(笑)。

また別のレッスンの時に比較的複雑な(難しいとは言わない)曲にも慣れて、メロディーとコードの整合性もバッチリと頭の中に入り、ヴィブラフォンで演奏するのが楽しくなっているレベル。複雑な(難しいとは言わない)コード進行を自信に満ちて駆け抜けてゆく様は頼もしい限りだ。よしよし、いいゾ、じゃ、もう1コーラス! ・・・・おや? ジャズのソロは曲のコード進行を一巡する単位をコーラスと呼び、そこそこ長い曲の場合はそんなにコーラスを重ねない。たまたまこの曲は長いので多くて2コーラス。で、2コーラス目に入ってしばらくすると、どうもさっきやった事が聞こえてくる。コーラス単位で音の動きや抑揚を進展させてゆくのをストーリーと呼ぶのだけど、どうも先のコーラスと代わり映えしない。一旦止めてその部分を指摘して再度トライ! ・・・・ううん、、何だろう、どんどんソロが「難しく」なって行く。つまり複雑なコード進行がどんどん複雑に感じてくるように。

「最初の頃は曲が難しいと思って曲の流れから振り落とされないようにあちこち調べ(楽曲分析)て練習するよね。それが頭に入ってくると曲の流れに乗れるから安心して自分の成果を披露するよね。今はちょうどそこだ。でも、それではまだ人前で演奏したり、録音してアルバムにしても聞いた人に感動は生まれない。なぜなら今は“自分はこんなに難しい曲をやっているんです”というのを得意になってやっているだけ。ここまで来たら、今度はどうすれば聞き手にわかりやすく自分を表現出来るのかを試みるべき。シンプルでストーリーが見えるものであれば聞き手も一緒に着いて来てくれる。自分のための感動から他人に伝える感動へと向かうべきだね」。
もちろんジャズだから、毎回うまく行くわけがないのだけど(笑)、しっかりと分析ができたら、いちいち準備しなくても出来る事の中にこそ、自分の個性があるのを知るべきです。

今日の話は、ソロというところから「伴奏」というところに変わります。

インプロヴイゼーション(インプロ)の感覚を大別すると三つのタイプがある 2019/10/4掲載

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・旋律型人間
・和音型人間
・リズム型人間

これは音楽の三要素と同じ分類で、ソロというものをどこから眺めているのか、というそれぞれの人の演奏から見えるバックグラウンドと思ってください。

皆さんは何型でしょう?

僕は和音型人間。ジャズという音楽に触れた時、そのサウンドにビビビッと反応したからです。なので例えばマイルス・デイビスの『Kind of Blue』というアルバムの“So What”という曲なら、何の疑いもなくピアノのビル・エバンスの真似に興じる。例えばそれが、キャノンボール・アダレイだったとすると(多分)旋律型人間。その真似というのも、決してビル・エバンスのソロではなく、伴奏の部分の真似に興じるわけです。そのサウンドをピアノやヴィブラフォンで弾いてるだけで幸せ。ソロ? まぁ、どうしても、と頼まれたらするけど(笑)。

実はソロの入り口もコードの響きなのです。フレーズやリックではありません。
ヴィブラフォンという楽器だからなのか、和音というものが軸となって全てに繋がっているのですね。

さて、前にも書きましたが、ジャズの演奏を始めるに当たって一番真似しやすいのがコード・サウンド。
ソロのメロディーはあちこち動き回るし楽器によっては音域的、物理的に追うのが不可能な場合があります。それと比べるとコードは後ろである程度の時間響きが継続していますから、聞き取りも簡単で真似しやすい。

その真似するところまでは誰でも出来るものの、その先をどのようにインプロへと繋ぐのかは人によって異なるかもしれませんね。

先週はコードトーンを使って4声の和音の配置(ヴォイシング)のやり方に触れました。

8小節のこんなコード進行を使って。

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ここに書かれた音符はヴィブラフォンやマリンバなど、同時発声音が制約された楽器で最大限にコードのサウンドを体感する開離和音(オープン・ヴォイシング)を基準としています。
最初の FMaj7 を題材に、コードの根音から上に向かって三度ずつ積み上げた和音の事を密集和音(クローズド・ヴォイシング)と呼び、その配置を開離和音(オープン・ヴォイシング)とする手法のドロップ2、ドロップ2 & 4を先週解説しました。ドロップ4はヴィブラフォンの性格から使うことがないのでドロップ2に重点を置いて説明しました。マリンバの場合はドロップ2 & 4も応用できるでしょう。ひとまずヴィブラフォンと同じ手法で感覚を磨いてください。

ここで同じ手法を用いて8小節の中に出てくる4つのコードをオープン・ヴォイシングに変換してみましょう。

FMaj7
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G7
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Gm7
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Gb7
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さて、ここからが本題。

この中の和音の配置で、コード伴奏として使えそうなのがドロップ2とその第一転回形。運良く(?)第一転回形は左手にコードの3, 7 、右手にコードのroot, 5、が配置されます。ヴィブラフォンのコード伴奏で一番使われる形なんですね。

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先のコンピングのリズムの話の時に、マリンバのコンピングの最後の小節(それは四小節のリズムパターンを形成していた)の三拍めと四拍めを四分音符二つとしたのを覚えているでしょうか? あの箇所にこの二つのヴォイシングを当て嵌めてみると良いでしょう。

ほら、これの最後のG7の所ですよ!

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何でもまずは先入観を捨てるところから 2019/10/18掲載

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マリンバの野口道子さんがウェブで公開されていた佐々木さんのコラムを読んで、今の日本でのマリンバという楽器の現状と過去からの警鐘に強く共感するところがあった。隣組のヴィブラフォンとしても、その状況は年々似つつあるような気配がしていたからだ。日本におけるマレット・キーボードの世界はある意味では特殊な構造となっているのかもしれない。いや、欧米とは大きく異なるのはもはや事実として受け止めるしかない。

僕はジャズという世界で、ヴィブラフォンをやっているが、それを学ぶ段階ではマリンバという楽器は避けて通れなかった。専門的な教育機関、音大、大学、音高にはマリンバ専攻科はあってもヴィブラフォン専攻科はなかった。高校を受験する時にすでにジャズ・ヴァイビスト以外に人生の選択肢を持たなかったところから入学後はマリンバの練習と、それまでに自分が見つけていたジャズのヴィブラフォンの研究の二足の草鞋。楽器の基礎を再度マリンバでやり直しながら誰も教えてくれない(笑)バートン・グリップやインプロを研究して行くのはとても楽しかった。

先の野口さんのウェブを拝見していると、初期の代表的なマリンバ専攻生のレパートリーの音源や動画がたくさんあるので、ついつい懐かしくて見入ってしまった。
今では完全にマリンバという楽器の外側にいるが、高校時代に受けた影響というのはしっかりと自分の中に取り込まれて消化しているのを実感。

特に懐かしかったのが黛敏郎作曲のコンチェルディーノ。原題はConcertino for Xylophone and Orchestra。はいはい、あの、木琴独特のリズムで始まる。マリンバの安倍圭子先生のレッスンでやった記憶が蘇りました。
湯山昭作曲のマリンバとアルトサックスのためのディベルティメント。原題はDivertimento for Marimba & Alto Saxophone。これは音大で一級上のサックスの大村泰氏に誘われてNHKのクラシックの番組『午後のリサイタル』で演奏した曲だった。NHKデビューがクラシックの番組というのも今となっては面白い。
さて、もうあれから軽く30年以上経つと、自分の身体のどこにもマリンバの“マ”の字も残っていなさそうだけど、これらの音源を久しぶりに(多分当時以来)聞いて、ちょうど今、次回作の検討中でリストアップした曲の中には上京間もない頃の作品も入っているんですが、ハタと我に返りました。
ああ、あのマリンバで演奏した音楽の影響は作曲の一部分として明確に残っていたんだなぁ、と。
それらが日の目をみる頃にまたお話しすると面白いでしょう。
ともかく、僕の中にもしっかりとマリンバの世界(日本の)が息衝いていたのを改めて感じました。

避けて通れなかった事が、今の自分を支える大きな原動力のある部分を担っているのですね。先入観はここでもあっさりと捨て去りました。

さて、本題。

ジャズにおけるマレット・キーボードのコンピング。
最初からスラスラとコードを読みながらインプロ出来る人はいません。
だからと言って、他人の演奏をコピーして拝借するなんてのは研究段階以外ではご法度。そうなると、どこから手を出せばいいの? と。

僕はジャズメンの奏でるコードの世界にその入口を見つけて入りました。
コードのサウンドはメロディーよりもゆったりと動くから、ある意味でマネしやすく、浸りやすいのです。

先週まではコードトーンだけでその仕組みを解説してみましたが、コードネームで示される4つのコードトーンの間にある音が気になりませんか?
インプロでメロディーを作るにも、このコードトーンの隙間にある音が無ければ思うようなメロディーが出来ません。

では、先週までと同じコード進行を使ってテンションを挿入してみましょう。
聞こえてくるコードサウンドがどのように変化するか? それがインプロへの原動力としてどのように効果を生むか? です。

題材とするコード進行と、マレット・キーボードの基礎的なヴォイシングは以下の通り。

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最初のFMaj7のサウンドからコードの根音を9thに置き換えてみましょう。
用法はこれまでと同じで、コードの基本形(密集和音/クローズド・ヴォイシング)の中からコードの根音をすぐ上の9thに置き換えます。メイジャーセブンス・コードは原則としてb9thは存在しないので簡単に9thをチョイス出来ますが、それぞれのコードのコードスケールを常に最初に割り出すところから始めるようにしましょう。

9thを含んだ密集和音(closed voicing)をドロップ2によって開離和音(open voicing)に置き換えます。

同時にこのFMaj7のコードスケールには13thがあるので、これを5thと置き換えます。つまりコードトーンの直ぐ上の音(コードスケールで)がアヴォイドノートにならなければ置き換えられるわけです。

同じように9thと13thを含んだ密集和音をドロップ2&4によって開離和音とするわけです。

このようにして出来たヴォイシングを転回して行くとコンピングで使うヴォイシングが最低でも四つ出来るわけですが、やはりドロップ2&4では開離和音のレンジが広すぎでマレット奏者には不向きなのでドロップ2を基本として転回形を作ってみましょう。(ただし、ヴィブラフォンは最低音が“F”なので使えないヴォィシングも出てきます)

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ジャズのコンピングを作る時にコードの根音を省略するのは低音域の楽器との交錯を避ける意味があります。
全部自分でやろうとしないで無理なところは専門分野に任すというアンサンブルの基本です。

転回形の作り方についてもう少し詳しく教えて欲しいというリクエストを貰ったので二つ目のコード、G7で説明しておきます。少しも複雑ではありませんが、頭の中で置き換えるには練習と慣れ以外に方法はありません。

このコードは本来のキー(調)の中には存在しないコードなのでまずコード・スケールを分析するところから始めましょう。

次のコードがGm7で、完全に key of F の仲間に戻るためたった一小節で key of Cに転調するとは考えません。そこで転調していないコードを示すためにコードスケールから“ある物”を取り除きます。
それはアヴォイドノート。ここでは詳しい説明は省きますが、これによってこのG7のコードスケールが判明します。

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ドロップ2でオープン・ヴォイシングを作りそれを転回して行きます。左側は9thのみ、右側ではコードスケール上にある13thも含めてみました。

その手順は以下のようにすると間違わないでしょう。これを頭の中で同時に置き換える訓練をして楽器で素早く置き換えて弾けるようにすればいいわけです。9thのみのケースで説明します。

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ここでは間違わないように各ヴォイス毎に配置するやり方を示しました。上からTop, 2nd, 3rd, 4th の順に足して行くわけですね。
慣れたら同時に転回できるようになります。もちろん練習あるのみ!


音で繋がる信頼関係 2019/11/1掲載

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音楽を人に教えた事がある人ならわかると思うけど、自分と同じ人間など他には一人もいない。なので音楽を教えるというのは、どれだけ既成概念を忘れて相手に接する事が出来るかにかかるのだけど、一部のジャズに於いては答えのある数学のような教え方を進めるところがある。これでは最初から楽しみが無い。数学と言うよりは算数だ。取っ掛かりとして使うならわかるが、所詮自転車の補助車だ。自分ではどこにも行けない。算数が悪いとは思わない。最初から出ている答えに向って「どうやって近づいて行くのか」を習う。どうやったって同じ答えになる。だからそれらは初級の時間としてあっという間に終わる。でも、本当にそうだろうか? もしも、答えが用意されていない算数だったとしたら・・・・。

算数には取り込めないものがある。「音色」だ。音楽の中で算数として当てはめられるのは「音程」だ。音楽では音程を度数として数字で表す。ジャズではこれが頻繁に出て来て幅を利かす。数字だから覚えれば簡単だ。いい数字、悪い数字、そんな判定基準が付け加えられながら。ところが、その割にはなぜそれが「いい数字」でなぜそれが「悪い数字」なのか知らないで使っているケースが案外多く、そう言うのを見掛けるにつれ悲しくなってしまう。本当にデータとして受験の丸暗記みたいに覚えているだけで、音の実態を知らなさ過ぎる。さらに、残念ながら音楽にはもう一つ「音色」というものがあるのを忘れている。初心者の「音色」、中級者の「音色」、上級者の「音色」、アマチュアの「音色」、そしてプロの「音色」。残念ながらこれには数値は付けられない。でも、これは初心者の時点ですでに存在している音なのだ。初心者なのにプロのような音色を持っている人もいれば、逆にプロのくせに初心者のような音色しか出ない奴もいる。

「音色」はいつ身に付くのだろうか?

何かを教えた時に、相手が受け止めるポイントも反応も異なってかまわない。肝心なのは教える側がどれだけ相手の目線に自分を添わせられているか。音楽の教えに特効薬なんてない。教える側が発した波動を相手がどのように受け止めているのかを常にキャッチするところから始まる。あの人に効果があったものがこの人にも効果を発揮するとは限らないし、かといって一人一人に100%異なる事を説明するわけにも行かない。要は、数字であれ、音色であれ、同じ説明でも相手がその時に何に反応しているのかを、教えている側が見逃さないこと。

同じ説明であっても、一回で理解する人もいれば、半年掛かる人もいる。数字は理解出来ても音色がなかなか伴わない人もいる。逆に十分表現力を持つ音色があるのに数字を理解出来ないばかりに苦しんでいる人もいる。その違いはあって当たり前だけど、どんな相手でもキャッチした時にしか出ないシグナルがあるのを見逃さないこと。それがどのタイミングでどんな風に返ってくるのかは人によって異なる。なので、「自分がこうだったから」という経験則はこの段階では殆ど意味を成さない。

常に、新しい感覚、新しい反応を教える側が相手に発信しながらその波動をキャッチする。まるで潜水艦のソナー探知機のようなことの繰り返しだけど、返って来る反応に少しでも輝きや閃きがあれば、そのやり方を持続し相手の目線を一つ一つ知って行く事で初めて音で繋がる「信頼関係」が生まれる。そして、教えられた事に自信が湧くから音色も変化して行く。
そこまで来て、実は教える側こそが、初めて相手の「言葉」の意味を理解出来ると言うのを忘れたらおしまい。まるでテレパシーのようだが、ジャズの指導に於いては十分準備された上でのテレパシーが生まれる。

ある有名マラソン・レジェンドが言っていた。よいコースの条件とは、気温も湿度も時間も季節もあるかもしれないが、観客の声援があるとないでは大違いなんです。走りながらその声援で自分でも信じられない事が生まれる、それがマラソンなんです、と。


コードのヴォイシングを考える。
密集和音(クローズド・ヴォイシング)をドロップ2によって開離和音(オープン・ヴォイシング)としながら、ヴィブラフォンらしさ、マリンバらしさをどのようにすれば活かせられるのか。

先週の転回形をリズム的なアクセントとして連動させるやり方をもう少し掘り下げてみよう。

FMaj7をひとつ取り出して考えてみる。

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これまでのヴォイシングは根音を含む4つのコードトーンの場合と、コードの根音は他の低音域の楽器が担当するというアンサンブルの大前提を活かして根音を省略して9thに置き換えた場合の二つ。
さらには完全五度もベースが担当すると前提してそれを13thに置き換えた場合。
いづれもドロップ2のヴォイシングを転回させて作っている。

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さて、マリンバもヴィブラフォンも実はコード伴奏としての低音域のリミットが存在し、主にそれはベースが担当する低音域のオクターブ(Eの音基準)にハーモニーのヴォイシングを侵入させないところから始まっている。
同じ楽器、例えば5オクターブのマリンバや各種サックスを組み合わせたサキソフォン・アンサンブル等ではこの限りではないけれど、和音が発せられる楽器とベースとの組合わせ等では響きが悪く敬遠される。
そうなると、ドロップ2で転回形を考えても、低音の“E”よりも下に和音の構成音は配置しないので、概ね転回形は3つとなる。
さらに高音側に於いてもあまりに高い音域にヴォイシングが及ぶとメロディーと抵触する事が増えるので転回形も限界がある。

この三つを使ってFMaj7だけでボサノヴァのカンピングを作ってみよう。

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たぶんこの三つ以外のヴォイシングだと、低音側、高音側それぞれにリミットを飛び出してしまうだろう。

そうなると、伴奏として考えた時に他の方法が無いものか試したくなる。

一つ、新しい発想へと繋いでみよう。

ここにFMaj7のドロップ2を軸とした三つのヴォイシングがある。
コードの根音は9thに置き換え済みだ。

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その真ん中のヴォイシング(オープン・ヴォイシングの基準となる左手3-7 右手9-5 の配置)に、そのヴォイシングととても似ている昔ここで説明した四度のヴォイシング(4 way of 4th interval build)を導入してみよう。

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さて、ここに4th interval buildを挿入した事で何か閃かないか? っえ? そんな・・・だ、大胆な!

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ヒントはコード表記の矛盾とアヴォイドノート 2019/11/8掲載

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「先入観」という意味ではこれから説明する事はコード・サウンドというものの感覚を少しだけ捨て去る方向に進むかもしれません。
先週までに説明していたヴィブラフォンやマリンバによるコード伴奏(カンピング)の形、というものの組立て方を別の角度で考えてみましょう。
コードのヴォイシングから決まり切った形を取ると伴奏はとても楽になります。しかし、これはコードの理解を音感として認識している人に向けたもので、決してビギナーに向けるものではありません。
ただ、その入り口は、コード・セオリーの知識など殆ど形成される前の「自分」にあると思うので「そうかもしれないな?」程度に触れておいてください。

コードを弾く上での「難問」とは何でしょう?

・・・・・・それはコードが持つ性格(機能)をどこまでキャッチできるかに掛かるでしょう。

その機能を音感的に言うと何でしょう?

・・・・・・・アヴォイド・ノートです。

じゃ、アヴォイド・ノートとは何でしょう?

・・・・・・・コードが含む相反する性質の音です。

相反する性質とは何でしょう?

・・・・・・・主(トニック)の音と属(ドミナント)の音の反発です。もちろん調性においての。

水と油の関係である性質の反発が音楽を展開のあるものへと誘う(進める)のを如何に聴き手に感じさせるのか、が作曲でも演奏でも永遠のテーマ。綺麗にとか、カッコよくとか、感動的にとか・・・

コードの伴奏をするときに、トライトーンの存在は機能を示す上でも絶対的だけど、いつも決まり切った位置で弾いていると自由さが無い。かといって転回形ではこれも位置が変わるだけで代わり映えはあまりない。さらに転回するとすぐに上と下のリミットに達してしまう。

ヴォイシングということからオープン・ヴォイシングを作ることを勧めた(ドロップ2)。これに以前教えた4 way of 4th interval buildも加えて考えると縦積みの音の転回と言う感覚からもう少し自由な繋がりや発想に繋がりはしないか?

先週は・・・・

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ドロップ2によるオープン・ヴォイシングの転回形。
すでにコードの根音(root)は低音域専門の楽器が担当する想定でコードスケール上の9thへと置き換え済み。

この真ん中の形を4 way of 4th interval buildに置き換えたところから、何かが変わり始める。

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FMaj7のヴォイシングとしてここに登場する音を集めてみると、

3rd, 5th, 7th, 9th, 13th.

実音にすると、

A, C, E, G, D.

音階的に並べてみると、

G-A-C-D-E

F メイジャーのスケールから抜けているのは、

コードの根音(root)として抜いた F
機能的にアヴォイドノートとなる Bb

つまりこれ以外の5つの音は使える、と言うこと。

では、これらの5つの音を使ってヴォイシングのやり方をちょっと変えてみよう。

上のオープン・ヴォイシングの時の最初の配置を起点として、まずは各コードのヴォイシングのTopの音を横に並べてみると、

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FMaj7のヴォイシングに含めないアヴォイド・ノートは飛ばした。

それらに今度は2nd voicing を施す。

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9thに置き換えたコードの根音(root)は飛ばして、再び出てきたアヴォイドノートも省く。

続いて3rd、さらに4th、同じ要領でと各声部を加えて行くと出来上がり。

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