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【奏法講座】グリップについて (4マレット)

2006年3月にブログを始めた時の最初の「金曜ブログ」(金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック)がグリップの話題でした。当時は掲示板(BBS)というテキストだけのコミュニティーツールがネットに普及し、やっと画像が貼付けられるかどうか、というもので、ブログが登場して画像も動画リンクもレイアウトも自在ということで様々な事が展開出来るようになりました。その後SNSへと進化して行くのですが、その初回にグリップの話しを取り上げたのも,それだけ質問が殺到していたわけです。
今ではいろんな所でネタとして取り扱われていますが、ちゃんとまともに使いこなしているものは少なく,特に動画ではかなりいい加減なものもある始末で、誰でも安易に情報を流す事が出来る便利さの弊害かと思います。ブログ終了を記念して、再度、当時解説したグリップの話しをお届けします。最後には皆さんと同じ学ぶ立場の人の例も入れています。
「持ち方」。全てはここから始まります。尚、解説の画像のサイズが当時の仕様の為小さいのは御容赦下さい。(2022年7月27日・追筆/赤松敏弘)

祝!ブログ開設記念 最終日の今日は“バートン グリップ”解説 2006/3/24掲載

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毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。金曜第一回目の今日はいままで掲示板で何度も論議されたグリップの話しです。

僕らのようなバチを何本も持って演奏する奏者の事をマレット・キーボーディストと呼びますがマレット(Mallets)を片手に2本ずつ持ってポロンポロンやるには、このバチの持ち方にひと工夫あるものです。
ここからはちょっと専門的になりますが、片手に2本のバチを握るには流派があって、大別すると次の3つがあります。

(1)トラディショナル グリップ(叉はスタンダード グリップとも)
(2)バートン グリップ
(3)ムッサー グリップ(叉は亜種にスティーブンス グリップなど)

それぞれにメリットとデメリットがあり使い分けは個人の好みというもので自由です。13歳の時にこの楽器(vibraphone)を触った瞬間から僕はバートン グリップなので他のグリップに言及しませんが、大まかに

(1)は左右1本ずつで演奏していた人が和音を弾く為に各々の外側にマレットを足した形の発展型
(2)は僕の師匠ゲイリー バートン(Gary Burton)氏が始めた持ち方で(1)とは手の中で重ねるマレットの上下が反転
(3)は片手2本ずつをほぼ平行の形で持つ形

(1)以外は全て人名が付いているように近年の演奏者が「握り方」を発展させています。

で、今日のお話しはバートン グリップの事です。
ホームページやBBSで何度も取り上げていますが、ネットユーザー、リスナーの人から「バートン グリップは手の中で重ねたマレットが振動してグリップノイズが出やすくないですか」という質問。

答えは「ありません」

人それぞれに体格が異なるように、グリップに関わる手の大きさや、手のひらの厚さ、指の長さや腕の長さというものが違います。その違いが音色の個性を生む大切な要因なので選択したグリップを自分の体格に合わせて改良しながら身に付ける事が重要。
確かに13歳の時にこの握り方を始めた当初は多少のグリップノイズがありましたが、それはすぐに改良すれば無くなりました。

文章での説明ではなかなか理解出来なかったと思うので、ブログ開設記念に公開します。(と、言ってもグリップに商標はありません)

まずはバートン グリップってこうよ 右手。これは下側から見たところ(左はこの逆)

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メロディーに使うのは写真で言うと「あっち」側。それが上に重なってます

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見えやすいように手前の親指立てちゃいました

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・・・・・で、このままでは僕の手の大きさではグリップノイズが出ます・・・・・

そこで少し改良が必要になりました。




“バートン グリップ 赤松バージョン” (特許出願中 ← うそ)

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そこで、題して“バートン グリップ 赤松バージョン” (特許出願中 ← うそ)

薬指を少し立て気味にして外側(上側)のマレットを軽く押し上げます。 あ、さっきから親指は立ったままですがこれは見やすい為の特別大サービス

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ちょっと角度を変えると手の中でマレットが重なってないのがわかるでしょ

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はい、出来上り!

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ちょうど僕ぐらいの手の大きさ、厚さの人にはお薦めです。

何だか細かいコトゆーブログだなぁ、と思う方もいるでしょうねぇ(笑)

下はバートン グリップとトラディショナル グリップの例。遠目じゃほとんど同じに見えますが、「手の中は・・・・」こんな感じ。

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左から あかまつ/vib(バートン グリップ) 松島美紀/marimba(トラディショナル グリップ) @ 銀座ヤマハライブ

金曜日はこのようにちょっとホームページで説明が難しい事や掲示板の投稿質問等で画像解説に適した事について話題と共に不定期で触れて行きます。新たな質問はこちらへ、、、(現在は受付終了しています)


グリップ左手の話し 人の振り見て我が振り直せ? 2016/2/19掲載

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4本のマレットを使って演奏する場合、大きくわけるとまず二種類の“MO-CHI-KA-TA”があります。

ひとつは手の中でマレットを交差させて持つクロスグリップ。
もう一つはマレットを交差させないインディペンデント・グリップ。

その二種の中でさらにクロスグリップではマレットを重ねる位置の違いからトラディショナル・グリップとバートン・グリップにわかれます。
トラディショナル・グリップはクロスするマレットのそれぞれ左右対称に手の内側となるマレットを上に重ねる方式で、バートン・グリップはクロスするマレットのそれぞれ左右対称に手の外側となるマレットを上に重ねる方式です。

僕はこの楽器を始めた13歳の時からクロスグリップしか使っていません。最初から4本マレットで始めたのでバートン・グリップを選びました。誰かに教わったのではなく、独習でしたからゲイリー・バートンのアルバムに載っていた写真が唯一のヒントに。

一見重ねるマレットの位置が違うだけに見えますが、実はそれぞれのマレットの使い方が大きく異なるので先週ちょっと気になる事があると書きました。

文章だけでは伝わりにくい点もあるので、この際に“スッキリ”させておきましょう。
ちょうど昨日、レッスンした生徒達の様子を見ながら説明しておきますね。

もちろん何も言わずに演奏中に撮って許可を得たものです。名前はニックネームだけにしますが(笑)
意識すると先週のブログを読んでいて、本当のところが隠れてしまうからです。

まずはトップバッターの“shushu”嬢。

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彼女の場合右手はOK。
左手は、やや親指がマレットの上に乗せ気味です。

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先週書いた高校の頃にグリップを安定させる為に、手の甲の上に十円玉を乗せてこれが落ちないようにマレットを開閉したり、左手の内側のマレットだけを動かす練習を見せてみました。
「手の甲を上に向ける」という意識を常に持って左手内側のマレットを動かすと、徐々に十円玉は滑らなくなりましたが、まぁ、これは極端なやり方ですから真似しなくてもいいんですが、やってみる価値はあるかもしれません。先週書いたように高校生の時に音楽科の寮で夜中に音が出せない時に思い付いたグリップ矯正のアイデアの一つです。

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続いては“ikeko”嬢。

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彼女はヴィブラフォンを習い始めてグリップをトラディショナルからバートンへと変えた一人です。長年マリンバをやっていたのでトラディショナル・グリップを使っていましたが、音の粒立ちや細かいコントロールやダンプニングを考えると変更が良かったように思います。

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親指が完全にマレットの上に乗っかってますね。たぶんトラディショナル・グリップの名残りだと思うので、これから徐々に消えて行くものと思われます。

ラストは“ホリヲ青年”。

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おやおや、綺麗なバートン・グリップです。
「いや、先週読んで、あらちょっと違うんじゃない、と直しました」と(笑)
じゃ、グリップは完璧だから弾く音の勉強を徹底的にやりましょう! と言うと嬉しそうに泣いていました(爆)

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この日の三人は比較的背が高かったのもありますが、皆左手の親指の位置を除けば綺麗なフォームでした。
手の厚さもマレットをホールドする上ではある程度厚いほうが有利な点はあります。

松山のレッスン生では・・・・

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トラディショナル・グリップの人もいます。

しかし、なぜトラディショナル・グリップを推奨しないのかという理由を知りたいでしょう?
理由も無く「形から」言っているのではありません。

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彼女のグリップを見ると左手のグリップで親指と人差し指がマレットを押し開いている感じに見えませんか?
親指がマレットの内側に入っていますね。
これはコードを弾いている瞬間のショットだと思うのですが、非常に開閉が不得意なんです。その為に基音側の鍵盤と派生音側の鍵盤を片手で弾く時に、手首を捻ってしまうのですね。
つまり、マレットの開閉で追いつかない場合は手首を捻って和音を弾こうとするのですが、これが半音程の連続だったりすると、その度に手首を逆側へと捻らねばならず、現実的には演奏不可能に陥ってしまうのです。

その改善方法として、「鍵盤のダンパー側の端を狙え」と指示するのですが、そこでも半音程の移動時に手首を捻ってしまうのです。

トラディショナル・グリップでこの点を克服し、マレット・ダンプニングやスラー奏法等のマレットコントロールをマスターすれば、問題はありません。
かなり難しいとは思いますが、まずはそこがコード・ミュージックへのハードルと思ってください。

もちろん、バートン・グリップに持ち替えているからと安心していても、この例のように左手の“MO-CHI-KA-TA”が、手の中で重ねるマレットの上下をひっくり返しただけで、実は左手の使い方がトラディショナル・グリップのままだった、な~んてケースが案外多いので自分で検証してみてください。

僕のように手の甲に十円玉を乗せて演奏出来るかどうかを試すのも、一つの方法ではあると思うのです。
マレットを重ねる上下が反対になるだけなら、わざわざグリップについて言及なんかしません。
それだけ「違う」という事を知っておきましょう。

左手のグリップの良い例と悪い例。

悪い例
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マレットに指を乗せてしまうと内側のマレットのコントロールが出来ないし不安定。

良い例
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これだと内側のマレットのコントロールが出来ますね。
しかも、ほら、手の甲に十円玉が乗せられるでしょ?(笑)

自分が演奏しているところを鏡や窓ガラスに映して見てください。

左手も右手も手の甲は上を向いていますか?
内側、外側のマレットの動きに無駄はありませんか?

左手の使い方が悪いと、独奏の時などに柔軟なベースラインやメロディーと伴奏の対比が付けにくくなります。右手は上手くいっているのに・・・・・あらら、なんて事のないように。

上達は日々のちょっとした「意識」から!

まずは「意識」するところから始めてください。
決して焦ったり、慌てたりしないように。